Lust | ナノ

久しぶりに休みを合わせる事が出来たというのに、やる事と言えば何時もと同じ事だった。
必要最低限のものしかない谷村の部屋。もう見慣れたその部屋の天井が、谷村の顔越しになまえの目に映る。
荒く乱れた呼吸の合間に漏れる声は、堪えようと努力をしても虚しいだけである。
シーツを強く握り締めながら顔を逸らして谷村の視線を避けた時、なまえの目には傍らに転がる谷村の携帯電話が目に入った。


「なまえ…さっきから声我慢しすぎ」
「だ、って…っあ」
「別にいいだろ…っ、昼間っから…セックスしてたって」
「やっ…」


びくんと身体が跳ねたと同時に膣壁がきつく収縮してゆくのを感じながら、なまえは今日最初の絶頂を迎えた。
一度律動を止めた谷村はまだ涼しい顔をしてたまま、そんななまえを覗き込むようにじっと見つめてくる。
何となく、何とは言えないが何時もと雰囲気の違う谷村の様子が、快楽に浸るなまえに不安を与えてゆく。


「谷村さ…っ」
「なに」
「っ、なんか今日…変、ッあ」
「別に、変じゃないでしょ」


そんな事言う余裕あるんだ。
くすりと吐息だけで笑いながらそう告げると、谷村は直ぐにもピストンを再開しだした。
なまえが気になる違和感は相変わらずで、本当はその違和感を確かめる余裕などはないのだが、それでもなまえは再び与えられた快楽の波に抗うように懸命に谷村の中にある違和感を探した。
一番過敏に反応を示してしまう場所ばかりを突き上げる谷村から何度も顔を背けそうになりながらも、なまえが必死の思いで谷村を見つめていると、谷村の視線が頻繁になまえの頭の脇へと注がれるのが判った。
その場所にあるのは先程なまえの目に入った彼の携帯電話で、その事実に気付いたなまえは漠然としていた違和感が形を持って不安に変わるのを感じた。


「谷、村さ…っ」
「…ん」
「も、っ…携帯、見てばっかり…っ」
「……」


己の訴えには何も言葉を発しない谷村の姿を目に、なまえは唇を噛み締めずには居られなかった。
自分を想って行為に臨んでいるのではない相手から与えられる快楽に嬌声を漏らす事が、悔しさと虚しさをなまえに芽生えさせる。
それでも行為を途中で止めてくれと言えないのは、彼の動きが与える熱がなまえにはあまりにも気持ちが良いからでもあった。


「なあなまえ、」
「っ、んん…」
「撮っていい…?」
「なん、っ…や」


律動を止めずに谷村が伸ばした右手には、なまえの傍らに転がっていた携帯電話が握られていた。
左手はしっかりとなまえの腰を鷲掴みにしたまま、谷村は器用に右手の親指でなにやら操作をし始めたようだった。
携帯電話をしきりに気にしていた理由が判ったのは良いが、この行為を撮影される事はなまえにとって嫌で嫌で仕方のない事である。


「やだ…っ、やめ…ッあ」
「会えない時の俺のオカズに、いいだろ?」
「やっ…だめ、」
「じゃあ、声だけ。な?」


お前のエロい声、好きなんだ。
嬉しそうに目を細めて笑うと、谷村は手にしていた携帯を再びなまえの顔の脇へと放った。
顔を近づけてくる谷村に戸惑っていると、そのまま彼の唇がなまえの耳を食むように吐息を掛けた。
いっぱい鳴けよ?
そう囁き終えると同時に激しさを増したピストンに飲まれ、なまえの声は機械の中へと吸い取られていった。
rec.

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