Lust | ナノ

ご機嫌な様子ではしゃぐようにふらふら歩くなまえの腕を取りながら、漸く着いた彼女の部屋。
ふぅ、とひとつ溜息を吐いた秋山は、なまえをベッドに残したままでキッチンへと直行した。


「なまえ、水飲みなよ?」
「はぁい」


食器棚からグラスをひとつ取り出すと、秋山はなまえの家の冷蔵庫の中にあったミネラルウォーターを注ぎ入れた。
どうやら調子に乗って飲ませ過ぎたらしい…。
そんな反省の気持ちも、なまえが具合を悪くしなかったお陰かそこまでの罪悪感を秋山にもたらす事はなかった。
アルコールの力でよく笑うようになったなまえとのひとときは、秋山も秋山ですっかり楽しんでいた事に違いはない。


「なまえ、ほら……って、ちょっと」


グラスを片手にキッチンから戻ると、なまえはベッドの上にごろりと寝転がっていた。
それだけなら何も驚く事はなかったのだが、彼女の転がるベッドの足元にはなまえがつい先ほどまで着用していた下着以外の服が全て脱ぎ散らかされていた。
このまま放っておけば確実に眠りに就きそうなあどけない顔で瞳を閉ざすなまえの傍らへと駆け寄るものの、普段なら自らこんなあられもない姿を晒すような子ではない事を重々知っている秋山としては、何故か見慣れているはずの彼女の下着姿にどぎまぎさせられた。


「なまえ…なんで脱いじゃってるの?」
「だって、暑かったんですもん」


えへへ、と笑いかけるなまえの笑顔に、秋山の心臓がひとつ大きく跳ねる。
全身の力が抜けた状態でベッドに横たわるなまえの姿が、いつも以上に艶かしく見えてならないのだ。
一度心を落ち着かせるためにふうと小さく息を吐くと、秋山は手にしたグラスをベッド傍のサイドボードに置いてなまえの隣へと腰を下ろした。


「ね、取り敢えず水飲んでおこう?」
「や」
「こら、我が儘言わないの」


伸ばした手でなまえの頭を撫でてやろうと思っていた秋山は、急にその手を掴まれた事に驚く暇もなく身体を引き寄せられてなまえの上へと状態を崩した。
急激に接近した互いの顔と顔に慌てるより前に、火照ったなまえの素肌の熱に意識が奪われる。


「もっとぎゅうって、くっついてくださいよー」
「っちょ…っと、」
「ぎゅーってして欲しいなぁ、秋山さんに」


ニコニコ笑う表情は、まるで無邪気な子供のようなのに。
秋山のアングルから見えるなまえの身体は、その辺のグラビア雑誌とは比べ物にならないほどに妖艶で淫猥に見えてならなかった。
腕に押し付けられた下着越しの柔らかな胸も、下腹部に当たる白い太腿も、何よりも自ら肌を露にしたなまえ自身にも、秋山の身体は過剰なまでに反応をしてしまう。


「抱き締めるだけじゃ、終わらないよ?」
「それでもいいですよ」
「…初めてだね、なまえからそんな風に言ってくれるの」


緩む口元を隠す事もなくなまえに口づけると、それまでの無邪気さが嘘のように消え、一瞬でなまえの表情が快楽を欲する娼婦のそれに変わった。
ぞくりと戦慄すら覚えたのは、なまえの瞳に中てられたからだけではないかもしれない…。
自分自身の感情を冷静に分析する余裕などは直ぐに秋山の中から消えてしまう。
めまぐるしく変わるなまえの表情をもっと堪能したいと欲する心に従うように、秋山は色香をまとうなまえの身体に即座に手を伸ばすのだった。
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