Lust | ナノ

ベッドに沈むなまえの背中にそっと口づけると、真島は彼女を起こさぬようにベッドを抜け出した。
革のパンツをはいただけの上半身裸のままでベランダに出ると、スモークの掛かった視界は白んで見えた。


「あちゃー…こら煙草湿気ってまうなぁ」


手すりに触れてみると、指先に雫が伝う。
ぼりぼりと後頭部を掻きながらやれやれ、と言った具合に溜め息を漏らしているうちに、真島はふと背後に人の気配を感じ取った。
くるりと振り返ってみれば、どこかホッとしたような表情を浮かべた薄着のなまえの姿があった。


「そないに薄着で起きてきたら風邪引くで」


ベランダから戻り、後ろ手に窓を閉めながらなまえに笑いかけると、真島の胸元にぎゅっとなまえがしがみつく。
ショーツに薄手のシャツを羽織っただけで生脚を晒すなまえを抱き締めてやれば、寝起き独特の温かな体温が真島の身体にも染み渡った。


「なんや?どないしたん?」
「真島さんが、寝てる間に帰っちゃったのかと思って…」
「…ほんで不安なって、そないな薄着で追っかけて来てくれたん?」


まったく、相変わらず可愛ェことしてくれるなぁなまえチャンは…。
ぎゅうっとなまえを抱き締めて互いの頬を擦り寄らせながら嬉しそうに囁く真島に、なまえは少しばかり不満げな表情を浮かべていた。
真島が満面の笑みでなまえの身体を僅かに離すと、当のなまえはぷぅと頬を膨れさせていた。


「…あれ、なんでそないに膨れっ面なん?」
「だって…あんな風に意味深にベッドから出て行っちゃったから…」


一人ぼっちにされたんだと思っちゃったじゃないですか…。
唇を尖らせて頬を膨らませるなまえの姿が可愛らしくて、真島はだらしなくニンマリと緩んだ顔を引き締めることも忘れてグッとなまえとの距離を詰める。
ちゅっと音を立ててその膨れっ面の唇めがけてキスを落とすと、はぁーと満足そうな溜め息をひとつ零した。


「奪っちゃったー、っちゅうヤツやな」
「っ、も…本当に心配したのに…」
「俺がなまえチャン置いて勝手に帰るわけないやろ?ちぃっと一服のつもりやっただけやで」


しっかし愛されとるなぁ、俺。
ニヤつく口元を引き締められずにぽつりと呟くと、もう…と言いながらなまえはくるりと真島に背を向けた。
そんな背中を悪びれもせずにぎゅっと抱き締めてなまえの肩口へと顔を寄せると、真島は直ぐそこにあるなまえの耳元めがけて囁きかけた。


「目も覚めてもうたし、もっぺんしとくか?」
「っ、しません…」
「…素直な方が、なまえは可愛ェで?」


ぱくりと耳朶を食みながら誘うようになまえに告げると、彼女の身体の方は随分と素直に反応を示す。
そんな姿に幸せな気持ちを噛み締めながら、白濁に滲む世界を背に真島はなまえをベッドルームへといざなうのだった。
白濁の深夜

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