Lust | ナノ

ベッドに沈まされた身体の上に圧し掛かる谷村の重さに、自然と心が跳ねる。
乱されてゆく服と、谷村が動くたびに香るほんのりと混じる煙草の香りが行為の始まりを告げているようでなまえを少しずつ緊張させてゆく。
首筋に顔を埋める彼の髪に指を絡ませながら抱き締めると、なまえの胸いっぱいに幸せな気持ちが満ちた。


「谷村さん…っ、」
「ん…?」
「っ、も…くすぐったい…」


ちろちろと舌先で鎖骨を往復する彼の動きが、全身に擽ったさを走らせる。
身体を竦ませながら身を捩ろうともなまえの其処から離れようとしない谷村が、意地悪なのに愛おしく感じられてならなかった。
先ほどから一切顔を上げずに首元にキスを繰り返しながらも、谷村の両手は器用になまえの服を一枚一枚丁寧に脱がせてゆく。
段々と晒される素肌の上を谷村の指先が這い回るだけで、これから与えられるであろう刺激を待ち侘びた身体が敏感になってゆくのが感じられた。


「…ッ、い…た、っ」
「……」


突然走った痛みになまえが思わず声を上げても、無言のままの谷村は相変わらずなまえの首筋に顔を埋めたままだった。
突き刺さるようなその痛みが、首筋から一気に全身を駆け巡る熱となってなまえを襲う。
肌を吸われ痕を残される時とは違った痛みは、明らかに谷村の歯がなまえの鎖骨に立てられた事を示していた。


「や…っ、谷村さ……ッ痛、い…」


鎖骨を咥える谷村が微かにでも動くと、ゴリゴリと嫌な音がなまえの耳に届く。
骨の上の薄い皮に突き立てられる谷村の犬歯が、思いがけぬ激痛となってなまえの表情を歪ませた。


「っ、やめ…、っ…あ、」
「痛くても感じるなんて…変態なんじゃない?」


ゆっくりと解放された首元に、じんじんと痛みが後を引く。
漸く顔を上げた谷村の表情に浮かぶどこか意地の悪い笑顔に、なまえの頬に微かに朱が差した。
痛みですら心地良いと感じてしまったのは、谷村が与えるからこそなのだ。


「ホント、エロい奴…」
「っ、谷村さ…」
「そういうの、かなりそそられる…」


触れ合った唇の隙間から押し入る谷村の舌先が、なまえの咥内で吐息ごと奪うように激しく絡みつく。
下着の上から乱暴に鷲掴みにされた柔らかな膨らみへの刺激に、ぞくりとなまえの背に震えが起こった。


「今日は覚悟しておけよ」
「ん…っ、あ…」


不敵に笑う谷村に、なまえは目が眩みそうになるのを抑えられなかった。
彼がくれる痛みなら構わないと思ってしまう辺りが重症だと理解していながらも、鎖骨に残る痛みにすらも今は快楽を求めてしまうのだった。
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