Lust | ナノ

彼の帰りを待ち侘びて、待ち切れずに睡魔に負けたなまえの身体がソファへと沈む。
まどろむ意識の中で部屋のドアが控えめに開かれた気配を感じながらなまえが重たい瞼を押し上げると、薄暗い室内にぼんやりと待ち人のシルエットが浮かんでいた。


「峯、さん…?」
「…そんなところで何をしてるんです?」


峯さんの帰りを待ってたんです。
その言葉を言い出せないまま、霞のかかった頭をなまえは必死に揺り起こそうとしていた。
それでも鉛のように重たい身体はなかなか言う事を聞かず、ソファの上に上半身を立て直すのが精一杯だった。


「全く…遅くなるから先に寝ていてくださいと言ったでしょう?」
「…そ、です…けど」
「そんなに眠たいなら尚更ですよ」


はぁ、と呆れたように溜息を漏らす峯に見下ろされながら、徐々になまえの眠気が覚めてくる。
それと同時に暗くなってゆく気持ちは、ただの自己満足で峯を待っていた事が彼にとって迷惑になっていたらしいと感じていた為に込み上げたものであった。
言われた通り、先に寝ていた方が峯にとっては良かったのかもしれない。
そんな後悔がじわじわと込み上げる中、なまえは目覚めたばかりの重たい頭に似た重たい気持ちを抱えてそっと溜息を漏らした。


「貴女が俺の為に無理をすることなんてない」
「っ、あ…」
「…ですが、」


ソファの足元に跪き、そっとなまえの左脚を包み込むように腕を通した峯に驚く暇もなく、なまえの膝の上にはふわりと峯の唇が押し当てられた。
深く背凭れに身体を預けていたなまえが咄嗟に反応出来ないのを良い事に、峯の唇はするすると膝から腿へと駆け上がる。
際どい位置まで唇を寄せる峯に慌ててスカートの裾を押さえ込むと、機嫌良さそうに喉の奥で笑う峯がそのままなまえの腿の上へと頭を乗せた。


「柄にもなく、嬉しかったですよ」
「良かった、です…」


膝枕をするように膝立ちのままなまえの脚の上に頭を乗せている峯が無性に愛おしくて、なまえはそっと伸ばした手で峯の髪に指を絡めた。
少しだけベタつく整髪料の手触りも気にならず、なまえは何度も何度も峯の頭を撫で続けていた。
彼が喜んでくれたという事実が、じわりとなまえの胸を温かくしてゆく。


「そのままもう少し、こうしていてくれ」
「峯さん…」
「…ただいま、なまえ」
「はい、」


お帰りなさい、義孝さん。
ぎゅうっと峯の頭を包むように抱き締めながら、なまえは精一杯に優しい声音で峯に囁くのだった。
お帰りの特権

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