Lust | ナノ

明かりを落とした浴室は、二人で入っても十分過ぎるほどの広さだった。
少し温めの湯の中に浸かりながら、なまえの身体は背中から峯に抱き締められていた。
峯の両脚の間、胸板に背を預けながら、所在無げにもじもじとなまえの視線が彷徨う。


「…まったく、さっきからちっとも落ち着きがありませんね」
「だって、恥かしくて…」
「あれだけ抱かれた後でも、まだ恥かしいんですか?」


くつくつと低い声で笑う峯の吐息が、右耳の後ろに掛かる。
腹部を包み込むように回された両腕が動いたかと思うと、峯の右手がなまえの左の胸を優しく揉みしだきだす。
どこか甘えるような仕草で擦り寄る峯の鼻先が首筋を擽ったかと思うと、そのまま軽く峯の唇に吸い付かれた。
たったそれだけの行為がやけになまえの身体を火照らせたのは、どちらかが動くたびに響く水音がやけに反響して鼓膜を擽るからであった。


「誰かと湯に浸かるなんて、以前なら考えられませんでしたが…」
「っ、ん…」
「相手が貴女では、そんな気もなくなってしまいますね」


舌先で首筋を這い上がりながらなまえの耳を甘噛みする峯に、なまえの背中が微かに仰け反る。
動くたびにバシャバシャと飛沫を上げる湯が、いちいちベッドとは別の場所で峯に裸をさらしているという事をなまえに自覚させる。
自分の漏らした吐息すらもやたらと響き渡ってしまうのが、尚更なまえの羞恥心を刺激した。


「なまえさん…」
「っ…はい、」
「…いや、何でもありません」


ぎゅうっとなまえの身体を強く抱き締める峯の方を僅かに振り返ってみると、いつもは後ろに撫で付けられている前髪がはらりと額に掛かっていた。
普段は見る事の出来ない峯の様はそれだけではなく、かち合った瞳はどこか切なげに艶めいて見える。


「峯、さん…」
「…貴女という人は…」


どうしてこんなに、俺を惹きつけるんです…?
苦しげに囁かれた言葉を耳に、なまえは堪らず峯に口づけた。
湯の中から引き抜いた右手で峯の後頭部を引き寄せると、なまえは自ら幾度も彼の唇にキスを落とす。
時折峯の唇から漏れる吐息や自分を抱き締める両腕に力が込められてゆくのが嬉しくて、なまえは首だけで振り返ったまま段々と深い口づけを交わした。


「ほら…、そうやってまた俺を惹きつける」
「っ、峯さん…」
「なまえさんのせいで、俺はもう貴女以外の女性に興味を持てそうにありません」


つん、と互いの鼻先を重ねるように顔を寄せた峯に主導権を奪われて、なまえの唇が塞がれる。
髪から滴る雫がいつも以上に峯を色気を引き立たせ、なまえはそんな峯の腕の中で再び身体の中心に熱を帯び始めていた。


「…また、濡れてきてますね」
「ん…っあ…、」
「湯の中でも判りますよ…。随分溢れてるな、なまえの蜜」


吐息ごと絡めとろうとするような峯の舌技に少しずつ呼吸を荒くさせながら、秘所の入口を擽る指に合わせてなまえの身体が跳ねる。
逃げ場のない浴槽の中で峯の愛撫をその身に受けながら、なまえは峯の髪に絡めた指先で何度も彼を抱き締め返した。
Lover soul

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