Lust | ナノ

手首を掴まれたまま早足で神室町を駆け抜けるなまえは、秋山の背中を目にドキドキとやけに煩く跳ねる心臓を痛いほどに感じていた。
手を引く秋山が向かっているのはどうやらスカイファイナンスのようなのだが、もう待てない、と切なそうに告げたきり言葉を発しない秋山に、なまえは少しだけ恐さも覚えていた。
一体どのタイミングで秋山のスイッチが入ってしまったんだろうと、緊張と恐怖の合間でなまえの中には僅かな期待が芽生えはじめる。
表通りから一本中に入ると、秋山はペースを落とすことなくなまえの手を引いたまま階段を駆け上った。自分が求められているのだと言う事は、彼が何も言わずともなまえには伝わっていた。
既に従業員の帰宅した事務所は電気が消えていたが、それでも外のネオンのおかげで薄明かりが差し込んでいる。
乱暴な手つきでドアを開けた秋山に引っ張られて事務所の中へと足を踏み入れると、なまえの背中はたった今閉ざされたばかりのスカイファイナンスの扉に音を立てて押し付けられた。


「なまえ…」
「っ、ん…」


少しだけ弾んだ息の合間、なまえの耳元には秋山の右手が事務所のドアを叩く音が響く。
突然塞がれた唇に受け入れる体制が整っていなかったなまえは、ぬるりとした熱の塊が唇を割って入り込んでくる感覚に身体を竦ませた。
未だに掴まれたままの右手首は、僅かに痛みが走る程強く秋山の手によって握り締められている。


「っ、きやまさ、」
「なまえ…っ、なまえ…」


階段を駆け上がったばかりの上がった息では、秋山の与える口づけがなまえにはとても苦しいものに感じられてならなかった。
酸素が欲しくて開いたはずの唇の隙間には、既に秋山の舌が我が物顔で居座っているのだ。
絡めとった舌先ごと己の吐息を奪い取ろうとするかのような激しい口づけに、一層なまえの呼吸が乱れる。
じわりじわりと少しずつ頭が痺れ始めたのは、酸欠の前触れなのか。それとも欲に中てられたからなのか。なまえには区別などつくはずもない。


「駿…っ、」
「っ、嗚呼…もっと呼んで」


名前を呼ばれた事で完全にスイッチが入ってしまったのか、貪るような口づけが一際激しさを増してなまえに襲い掛かる。
崩れてしまいそうな身体を支えようと、ドアに添えられた秋山の右腕の間から手を差し入れると、なまえはぎゅっとワインレッドのジャケットの背中を握り締めた。
苦しくて本当は唇を離して欲しいのに、これではまるでもっと欲しいと強請っているようだ…となまえの脳内の冷静な一部はぼんやりとそんなことを考えてしまう。
何度も唇か重なるたびにドアがガチャガチャと震えるような音を立てるのが、口づけの激しさを示しているようで、なまえは恥かしさでどうにかなってしまいそうだった。


「駿、苦し…っ、」
「駄目、もっと…」


ドアが立てる音が一際大きく響くと同時に、秋山の右膝がなまえの両脚の間に割り込んでくる。
逃げ場のない中で未だに止まない口づけが、一層深くまでなまえの咥内を掻き乱す。
時折秋山の唇から微かに漏れる吐息交じりの低い呻き声が、あまりにも甘く堪能的になまえの鼓膜を揺さぶってゆく。
嗚呼、余裕がないのは彼も一緒なのか…。そう思うと、なまえは満ち溢れた幸福感で胸が詰まる思いだった。


「早くなまえとこうしたくて、ずっと我慢してた」
「っ、ん…あ、」
「ゴメン、盛りすぎ…かな」


でも止めてあげられない…。
悪戯っぽく、それでもどこか艶っぽく響く秋山の声を耳に、なまえは縋りつく手に懸命に力を込めた。
掴まれた右手首は、未だに秋山の手によって強く握り締められたままだった。
ここでキスして

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