Lust | ナノ

ねぇ、俺のこと…好き?
そう問いかけると、いつもなまえの口からは好きですよ、と返される。
それが不満なわけでは決してないのだが、どこか物足りなさを感じているのも事実だった。
まるで犬や猫を好きと言う時のような、軽くて現実感のない「好き」という言葉。
品田にとってはそれがもどかしくてならなかった。


「ねぇなまえちゃん…」
「はい?」
「なまえちゃんは桐生さんのこと、好き?」
「はい、好きですよ。いつも良くしてもらってますから」
「じゃあ…堂島君は?」
「大吾さんも好きです、品田さんのお友達ですから」
「…それじゃあ、」


俺は?
そう問えば、なまえの口からはもちろん好きですよ、と返された。
その好きが桐生や大吾の好きとどう違うのか、それは言葉の響きからでは品田には全く区別がつかないものだった。
もっと特別になりたいのだ。なまえにとっての唯一の存在に。
ただ、いい年をした大人の男がそんなメルヘンな事を考えているだなんて事は知られたくないのも事実であった。
くだらない、馬鹿馬鹿しい悩みだとしか言いようのないそんな葛藤をぶつけたら、なまえは自分の事をどう思うだろうか。
またしても込み上げたしょうもない悩みが、思わず溜息となって品田の口から零れだす。


「あの…品田さん、」
「ん…?」
「品田さんの好きは、特別な好きですよ」
「特、別…?じゃあ…」


グッとなまえの肩を掴むと、少しだけ乱暴な仕草で品田の両腕がなまえの身体を押し倒す。
圧し掛かるように身体を寄せると、こつんと額を重ね合わせて互いの顔を近づけた。


「こういう事、してもいい好き?」
「…はい」
「俺だけ、特別?」
「はい」


ふわっと柔らかな笑顔が浮かんだなまえの唇目掛けて、品田の唇が静かに着地する。
触れただけで離れると、一度では名残惜しくて品田はもう一度なまえにキスをした。
二度、三度と触れては離れる口づけを交わしながら、堪らず品田はくすりと小さな笑顔を零した。


「ね…俺、子供みたい?」
「少しだけ」
「そういうのは、嫌い?」
「いいえ、」


どんな品田さんも、大好きですよ。
首筋に絡みつくなまえの両腕が品田の髪を優しく撫でる。
少しだけ重みを増したその両腕に引き寄せられると、品田の鼻先はなまえの首筋へと埋もれた。
香水ではない、甘く優しく幸せな香りが鼻腔を擽る中、品田はまるで子供のようになまえの腕の中で甘えるのだった。
besondere Behandlung

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