Lust | ナノ

背中にぴったりとくっついた温もりが、ふわりとなまえの身体を包み込む。
両肩を包むように回された逞しい腕の中で、なまえは一瞬驚いたように身体を竦ませると、ぎゅっと握り潰された様に痛んだ心臓の辺りにそっと手を添えた。


「大吾さん…」
「…こうして欲しかったんじゃなかったか…?」


違ったか?
耳元で囁くように告げた声に、なまえは目眩を覚えずには居られなかった。
どうしてこの人はこんなにも繊細に心の変化に気付いてくれるんだろうかと、じんわりと幸せな気持ちが溢れ出す。
絡みつく大吾の腕にそっと手を添えると、なまえはそのままゆっくりと背中の温もりを堪能した。


「お前のそういう寂しそうな顔、見てるのはつらい…」
「…ごめんなさい」
「いや…俺がそういう顔、させてるんだよな」


悪い、不安な思いばかりさせて。
ぎゅっと力が込められた大吾の腕が、痛いくらいになまえの身体を抱きしめる。
首筋に顔を埋められると、ちくりとした大吾の髭の感覚がくすぐったかった。


「俺は我が儘だから、」
「?」
「お前にそういう顔させてるって判ってても、お前を手放したくない」
「大吾さん…」


なまえ、と耳元で名を呼ばれて振り返ると、唇が触れあいそうなほど近くに大吾の顔があった。
とん、とくっついた鼻先。それでも触れない互いの唇の距離が、なまえにはもどかしくてならなかった。
吐息がかかるほど近づいた大吾の唇に、早く触れたくて気持ちが急く。
物欲しそうな瞳で見つめておきながら僅かな距離を残す大吾が、なまえの身体を焦らして止まない。


「なあ、なまえ…」
「っ、ん…」
「お前から…しろよ」
「っ、あ…」


恥らうより先に顎を僅かに逸らすと、なまえの唇が大吾のそれに重なった。
最初の口づけで自ら舌先を差し入れるように伸ばすと、熱い吐息と共になまえを受け入れる大吾の舌がなまえを絡め取る。
背中に体重を預けてもなまえを包み込んだまま動じない大吾に、なまえは途端に安心感を覚えた。


「大吾、さ…っ、」
「…ん?」
「も…、大好き、です…」
「…嗚呼」


知ってるよ。
柔らかく口元を緩めた大吾に再び強く抱き締められると、貪るような口づけが降り注ぐ。
僅かに開いた唇から震える吐息を零しながら、なまえはそっと瞳を閉ざした。
Ohne dich

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