Lust | ナノ

女の中で爆ぜそうになった雄を引っこ抜くと、渡瀬は大股一歩でベッドに横たわる女の傍へと膝を付き、口を開けて喘ぐその顔に向けていきり立った其れの先端を向けた。
醜く口を開けて息を乱す女の目の前で何度か自身を扱き上げると、どろりとした白濁の熱がその女の頬や髪に飛び散る。
一瞬歪んだその表情にも無感情のままで事を済ませると、渡瀬はオイ、と扉一枚隔てた隣室で控える部下に声を掛けた。


「後はお前らで好きにしたらええわ。適当に回してうまいこと撮っておけや」
「はい、お疲れ様でした」
「嗚呼…それとな、終わったらいつもの額、払うとけよ」


ベッドに女を残したまま数人の部下と入れ違いに部屋を出ると、渡瀬は全裸のままで浴室へと足を向けた。
最近どうも満たされないのは一体何故だろうか、とこの頃は同じ自問自答が尽きない。
元々そこまで行為を楽しいと思っていたわけではなく、単に溜まったものを吐き出すために適当な女を呼んでの行為ではあったのだが、近頃はそれが退屈で退屈で仕方がなかった。
チッと舌打ちをしながらシャワーを頭から浴びると、渡瀬は静かに瞳を閉ざす。
嗚呼、なんとつまらないんだろうかと、苛々とした感情が湧き上がった。
瞳を閉ざせば、渡瀬の瞼の裏には自然となまえの姿が浮かぶ。


「嗚呼、クソ…餓鬼やあるまいに…」


先ほどの行為では熱くなりきれなかった渡瀬の身体が、なまえの姿を思い描くだけで脈打ち始める。
なまえを思い浮かべながら抱いたはずの名も知らぬ女も、所詮は他人。
いくら無理矢理なまえを犯しているんだと自分に言い聞かせながら挑んだ行為であっても、初めてなまえを抱いた時のあの凄まじい高揚感を味わうことは出来なかった。
煩いくらいに喚く喘ぎ声も、挿入した時の具合も、全身から漂う香りも、何もかもが似ても似つかない。
これならばまだなまえを思って自慰行為に耽る方がよっぽどましだと思わずには居られなくなり、途端に渡瀬は込み上げる感情を抑えきれずに一人笑いを零した。


「まさか、ここまでハマってまうとはなぁ…」


シャワーを止めると滴る雫を右手で拭いながら、渡瀬はようやく目を開いた。
先ほど熱を放ったはずの其れが、なまえの艶かしい姿を思い浮かべただけで再び立ち上がっていたのがなんとも滑稽である。
触れても居ないのにこの様か…。
自分自身に呆れたように溜息を吐くも、とにかく今はなまえが欲しくて仕方がなかった。


「どれ……電話でもしてみよか」


ふう、と大きな溜息を吐くと、渡瀬は浴室を後にした。
きっとなまえを目の前にしたら先ほどのような乱暴な扱いなど出来るわけなどないのだろうが、渡瀬の頭の中でだけはいつも犯すようになまえを貪る絵が浮かんでしまう。
力ずくで全てを奪ってしまいたい。あの愛おしい顔に、先ほどのように全ての欲をぶちまけてやりたい。
無理矢理口の中に己を捩じ込んで、咽の奥に熱を注ぎ込みたい。自分しか知らない小さな蜜壷が己を飲み込む様を、この目に焼き付けたい。
誰にも見せず、誰にも会わせず、自分だけの手の中になまえを収めておきたい。そんな欲求が募ってゆく。
嗚呼、でも…。


「そないな根性、あらへんくせになぁ…」


はっ、と自嘲気味の溜息の中、それでも身体は手際よく出かける支度を整えているのが笑えてしまう。
濡れた髪を後ろに撫で付けると、渡瀬はガサツな動きで全身にバスタオルを這わせた。
なまえを目の前にした時の情けないほどに臆病な姿は、自分が一番笑止の至りだと感じているのだ。そんな自分に出来るのは、精々頭の中で好き放題なまえを犯す事だけである。
だがそれも、名も知らぬ女に投影するのはこれで最後にしようと思ってしまう辺りが、自身が本気でなまえに入れ込んでいるのだと自覚させられて気恥ずかしくもあった。


「もうそろそろ、帰って来とるやろか…」


スーツのポケットへと伸びる手には、携帯電話が触れる。
発信履歴の一番上にあるなまえの名に自然と口元を緩めながら、渡瀬の指が通話ボタンを押すのだった。

脳内蹂躙

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