Lust | ナノ

琥珀色の液体がさざ波を立てるグラスが、龍司の大きな手によってテーブルの上へと戻される。
付けっ放しになっていたテレビが突然ブラックアウトしたかと思うと、龍司の指先が丁度リモコンから離れてゆくところだった。


「あの、龍司さ、」
「なあなまえ…」


もっとこっち…来てくれや。
低く静かな声に呼び寄せられ、なまえの心臓が跳ね上がる。
雄雄しい腕が伸びたかと思うと、なまえの肩がぐっと龍司の傍らへと引き寄せられた。
戸惑う間もなく耳の輪郭をなぞり上げる龍司の熱した舌先の感覚に、思わずなまえの身体は竦んだ。
これしきの酒の量で龍司が酔ったとは到底考えられないなまえは、龍司の腕の中でもがきながら必死に声を殺す事で手一杯だった。


「も…っ、どうしたんですか…?」
「…ん、何がや」
「だって…っ…、こんな、」
「いや…。たまにはお前を酔わせてみとうなっただけや」


耳を舐られながら肩口を押さえつけられたかと思うと、なまえの背中はソファの上に沈まされていた。
見上げた視界いっぱいに広がる龍司の薄っすらとした笑みが、ぞくりとなまえの背筋に痺れを走らせる。
なまえの両腿の上に跨るようにマウントする龍司の事など、最早なまえが押し退けることは不可能に近かった。
手を伸ばした龍司がテーブルの上のグラスを取ると、琥珀色の液体が大きく傾きながら一口分龍司の咥内へと消えてゆく。
グラスが再びテーブルへと戻されるや否や、なまえの両頬が龍司の手の中にすっぽりと覆われる。


「龍、っ…」
「…っ、ん」


重なり合った唇の隙間から侵入した舌先が、なまえの唇を割り開く。
その間を伝って流れる生ぬるい液体が、どんどんなまえの咥内へと居場所を移し始めた。
舌先を絡め取られながら伝い来るアルコールをつい飲下してしまうと、途端になまえの喉は焼け付くような痛みを覚えた。
一気にカッと火照った身体のせいか、いつもよりも鼓膜を刺激する水音と龍司の舌技をなまえの五感が一層敏感に感じとってしまう。
頬を伝って溢れた雫が龍司の指の間を縫って己の首筋まで流れてゆくその感触が、なまえには不快感よりも快感をもたらす程であった。


「零したら、アカンやろ?」
「…っ、龍司、さ…」
「悪い子やなぁ、なまえは…」


にいっと口の端を上げて笑う龍司が、なまえの唇から溢れたアルコールで濡れた自らの指を舐る。
目の前で見せ付けられるその行為と太い指に纏わり付くように蠢く舌先の動きが無性に卑猥なものに感じられ、なまえは耐え切れず視線を逸らした。
そんななまえの様子がよっぽど嬉しいのか、喉の奥でくつくつと笑いながら、龍司がなまえの前髪を優しい手つきで押し退ける。


「身体、火照ってきたんちゃうか?」
「っ、喉…熱い、です」
「喉だけか?」
「あ…っ、も…全身、熱…っ」
「そうか……」


ほんなら、脱がせてやらんとアカンな。
再び唇を塞がれると同時に、龍司の指が腹部を撫でながら服を捲り上げてゆく。
ただなぞり上げられるだけの事が強烈な刺激となってなまえを襲い、龍司に塞がれたままの唇の間からは甘い声が漏れた。


「龍司さん…っ、も…早く、」
「なんや…酒が入ると欲しがりになるんやな、なまえは」


くつくつと意地の悪い声で笑う龍司の首筋に縋るように手を伸ばすと、なまえはそのまま龍司を引き寄せてキスをした。
絡めた舌先からほんのりと漂うアルコールの味が、なまえの身体を疼かせてしまう。
ゆっくり味わったるわ、と告げる声に胸を高鳴らせながら、なまえは龍司の唇に走る傷跡にそっと舌を纏わせるのだった。
唇で愛を注ぐ

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