Wrath | ナノ
(渡瀬@愛人)


「あんま嬉しそうやないな」
「そういう、わけじゃ…」

興味がなくとも明らかに高額だと判るバッグを前に、なまえは戸惑いを隠せなかった。
事ある毎にバッグやネックレスや時計と言った高額なプレゼントを買ってやってくる渡瀬に、気持ちが重たくなってゆく。
彼からのプレゼントが嬉しくない訳ではないのだが、やはり彼のチョイスは身分不相応と言わざるを得ない。
そして何よりも、なまえが欲しいのはプレゼントではないのだ。それが何よりもなまえの気持ちを沈ませている要因であった。

「私、モノが欲しくて渡瀬さんの傍に居るわけじゃないんです」
「……それは、判っとる」
「私は、渡瀬さんと一緒に居られる時間が大事ですから…」

こんなに高価なものはもう、受け取れません。
俯き加減のせいか、なまえの声は思ったよりも小さな声になってしまっていた。
彼の気持ちを否定するようで怖くもあったし、金で買われた女のように思えてしまうことが悔しくもあった。
じわりと目頭が熱くなり、涙が零れそうになるのを隠そうと、なまえは一層顔を俯かせてしまう。

「お前の気持ち、傷つけてしもたんやな」
「っ、渡…」
「スマンことしたな…ホンマに」

優しく抱き寄せる彼の両腕に、堪えていたはずの涙がなまえの頬を伝う。
ワシは最低な男やな、と呟いた声が切なげで、なまえは泣きじゃくりながらも幾度となく首を振って否定して見せた。

「お前を待たせとるんが後ろめとォなってもうて、金積んで誤魔化してしもたわ…」

素直にこないしとったら良かったんやな。
優しく囁きながら、彼の親指がなまえの頬に伝った雫を拭う。
濡れた頬を包み込んでキスをする渡瀬の唇を受け入れながら、なまえは少しずつ心が落ち着いてゆくのを感じていた。

「必ずお前を幸せにしたる」
「渡瀬、さん…」
「待っとき。もう直ぐやから」

Nov25 20:30


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