Wrath | ナノ
(柏木@愛人)


帰りに引き止めることはしない。そう心に決めていても、やはり彼が帰ってしまうのはとても切なくて寂しい。
行かないで、とつい口に出してしまいそうになって、なまえは慌てて唇を強く結んだ。
なまえの作った手料理で食事をし、テレビを観ながら談笑し、そして何度も肌を重ねあった。
恋人同士よりも深い関係で居られる気がしていても、別れの瞬間には現実が突き刺さる。

「明日もまた、同じ時間に」
「はい。おやすみなさい、柏木さん」
「…なぁ、頼むからそんな顔…しないでくれ」

苦しそうに眉根を寄せる彼の指先が、なまえの頬をそっとなぞる。
その指先に擦り寄るようになまえがきゅっと瞳を閉ざすと、なまえの唇には彼の唇が重なった。
何度も何度も口付け合っても、革靴まで履いて帰り支度が万全の彼は一向に帰ろうとはしない。
名残惜しそうになまえの身体を抱き締めたままで、せつなく溜め息を零した。

「時間が掛かって、本当にすまない」
「、柏木さん…」
「組の意向はお前とは関係ないのに…完全に巻き込んじまってるな」

早くお前を迎えに来られるように努力する。
強い抱擁の中、胸に込み上げる想いを堪えるようになまえも強く柏木に抱き縋った。
愛してると告げる柔らかな唇を奪うと、なまえは小さく頷いて見せた。

「悪い、お前を置いて帰っちまって…」
「いいんです。明日また逢えますから」
「…そうか。俺の方が潔くねぇな」

お前を置いて、帰りたくねぇよ…。
甘えたようになまえの肩口に擦り寄ると、彼は切なげな溜め息を零す。
そっと伸ばした指先で彼の頭を撫でてやれば、再びなまえの唇が彼の唇で塞がれた。

Nov25 20:30


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