「だーれだ?」 くだらない、と思うなら笑っても良いよ。自己満足なんだから。 クイズ・ショウ 彼女の華奢な体を、後ろから抱き締める。部屋の中には俺と名前しか居ないからすぐに分かるのに、名前は少し考えて、達哉、と答えた。 「せいかい」 顔を覗き込むと、名前はいつもの顔で笑い掛けてくれた。 「クイズに正解した名前さんには、素敵な賞品が贈られます」 「なぁに?」 「俺」 顔を見合わせて、くすりと笑う。料理中の名前の手には包丁が握られていて、俺はそっとそれを離させた。 「欲しない?」 「そんな事ないよ」 「じゃあ、欲しいって言って」 くだらない、と思うなら笑っても良いよ、拒んでいいよ、 「欲しい、達哉が」 …自己満足だから。 名前は言ったあと、顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。 「名前」 「……うん」 「かわいい」 「……ありがと」 幾らくだらなくても、俺の自己満足であっても、それに名前が付き合ってくれる安心感。 抱き締めたまま、俺はやっぱり名前の事が好きなんだな、と思った。 |