風が吹く度たなびくスカート。ちらちら細い足が晒される。
膝には絆創膏が貼ってある。綺麗だ、なんて、エロ親父みたい。


チラリズム


授業開始のチャイムが鳴るが、名前は動き出す気配がなかった。フェンスにしがみついて、屋上から町の景色を飽きもせずに眺め続ける。
時折強い風が吹き、スカートが膨らむ。俺はその度どぎまぎしているのに、本人はまったく気付いていない様子でそれにも緊張する。


「名前ー…」
「なに?」
「飽きないの?」
「飽きないよー」


二時間目の授業の途中にこっそりと抜け出して、今は四時間目が始まったところ。屋上は普段生徒の立ち入りが禁止で、誰も来ることはない。それを良いことに散々サボっているという寸法なのだ。


「……名前」
「もう、なんだよう」


何度も彼女の邪魔をするものだから、不機嫌そうにして振り返った。
風を含んでゆらゆらするスカート、目を逸らしながら、指を指す。顔に熱が上がってくるのを感じる。


「スカート、ひらひらしてる」
「スカートはそういう物だよ」
「そうじゃなくて、」


パンツ見えそうだし。
実際、さっき見えてたし。
一瞬の出来事だったが、鮮明に思い出せてしまう自分が憎たらい。


「パンツ、見えそう」


名前は驚いて、それから少し顔を赤らめた。スカートを押さえる。


「くにのエッチ!」
「や、わざと見た訳じゃ…」
「!見たの!?」
「……あっ」


秘密にしておくつもりだったのに。思わず言ってしまった。慌てて口を押さえても、時既に遅し。


「くに、さいてー」
「言葉の綾だよ、」
「…何色だった?」
「え?ピンク」
「ほら!」


…ああ、さいてーだ。
彼女に嫌われるのは必至だ。部活行きにくくなるし、明日から弁当も作ってくれなくなるかも知れない。


「…くには素直だなあ」
「……、」
「そんなところが、好きだよ」


思わず名前の顔を見た。
言った本人はスカートを押さえたまま、照れ笑いをしていた。


( かわいい、かわいい ! )


ドキドキしながら、もう一度ごめんね、と謝った。名前は頷く。
強い風が吹く。スカートがふわりとまくれて、わっ、と声をあげたら彼女のか弱いパンチが飛んできた。

グッジョブ、風!
なんて、声にはだせません。

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