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 夢百合草 22

「お母さん、どうしたの?」

膝を折ったままの母の近くに寄って部屋の中のリヴァイさんとを見比べる。
リヴァイさんの方は口を噤んでいるけれど至って涼やかな表情で、何を思っているかはまた分からない。


母はうーん、と小さく唸ってから考え込むように顎に当てた。


「ナツ、この人本当にオランダ人なのかしら」

「…えっ?」


なに?
どういう事?


「なんで?母さん、こいつと話してたじゃん。同じ言葉なんでしょ?」

「言葉は何となく分かるし通じているみたいだけれど、少し違う。
ゆっくりと話してもらえば分かりますが、発音も強弱の付け方も違うのです」


言葉が違う?オランダ語じゃないの?
そんな単語だけ似ている言語なんてあるんだろうか。

母とリヴァイさんをまた交互に見比べて。
私も少し混乱したまま、焦って口を開いた。


「お母さん、リヴァイさんはどうして海で倒れていたか聞いた?
出島に帰らなきゃいけないんでしょ?」


「それが…この人覚えていないそうよ」


どうしたものかしらと母はもう一度難しい顔をした。



『ここは一体どこなんだ。…俺の言っていることは通じるているか?』


話し合う私達に、リヴァイさんが声を掛ける。


『会話が出来るというだけで有り難いがな。
少し状況を整理させてくれ、地図なんかはないのか』


「地図…」


ぽつりとそう呟いた母は、雪彦を見上げて「雪、地図を持ってきて」と言った。


『息子が地図を持ってきます。
リヴァイさん、あなたの言葉はなんとなく分かりますが聞きなれないものなのです。
あなたはどこから出島に来た方なのですか?』

『デジマ……?』


とっても不思議そうにその言葉を繰り返すリヴァイさんの眉根は寄せられて、ピンときていないようだ。


「お母さん、リヴァイさん怪我のせいで記憶がないとか…?」

「…もしそうならお医者さんを呼ばなくてはいけませんね。」


母もそのリヴァイさんの様子を見てそう思ったのか、心配そうに言葉を続けた。


『リヴァイさん、どこかで強く頭を打ったとか、何か覚えていることはありますか?
ここに来る前はどちらにお住まいでした?』


『いや、特に覚えてないのはここに来る前までだ。
調査兵団に所属していたことも覚えているし、別に記憶を無くしているわけじゃない。
ただここがどこだかさっぱり分からねぇだけだ』


『調査……?』


今度は不思議な言葉を母が繰り返す番だった。
どうもおかしい。

二人が会話をすればするほど戸惑いが増えていくようにも見えた。

そこへ、奥の部屋の箪笥から地図を手に戻ってきた。
地図を雪彦から受け取った母はその場に広げて見せて、リヴァイさんはそれを見て同じように地図の前に座り込んだ。

本になっているのは日本の地図で、もう一枚の大切に箱の中に保管されているのは世界地図だ。
一般家庭では世界地図はあまり普及しておらず、出島のお役人でもないうちの家庭にそれがあるのは珍しいことかもしれなかった。

母はまず本の一番初めの頁を開いて日本地図を指差した。


『…これが、日本です。
私達がいるのは今ここ。出島はこのあたりです。
調査というのは日本のことをですか?軍隊に所属している方?』



    


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