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 夢百合草 13

小さく呼んだにも関わらず、私のその声は彼にしっかりと届いていたようだ。

リヴァイさんはすぐに反応して立ち上がった私をしっかりと見上げてくれる。



名前。

合っていたみたいだ。
よかった…。


日本人とは違う整った顔が私を見据える。

顔の造りじたいが小さくて、でも黒髪だからか着物もよく似合って見える。

手足もバランスがよくスラリとしていて和服も似合うなんて。
これじゃあ日本人は勝ち目がないなと無意識に日本人の男性と、このリヴァイさんを比べてしまった。

その見慣れない顔立ちがどうにも綺麗だと思ってしまうなんて、私も雪彦と同じように珍しいもの好きなんだろうか。

こんなに若い異人さんを見るのが初めてだからかもしれない。


…きっとこの人から見たら私なんてぱっとしない町娘の一人にしか見えないんだろうけど。


その目に吸い込まれそうになり、思わずはっとする。


「…具合が悪いところに二人で長居してすいませんでした。
どうぞゆっくり横になってください。
なにかあったら、いつでも声をかけてくださいね」


そのまま雪の手を引き、膝を折って襖を閉める。
完全に戸を閉める前に一瞬目が合ったので会釈をした。


音もせずに閉まった襖から手を離し、肩の力を抜いてから立ち上がった。
そんな私に、居間へ歩き出していた雪彦が声を掛ける。


「姉ちゃんってああいうのが好みなの?
異人なんて母さん怒ると思うけどな」


少し面白そうにこちらを振り返るその生意気な表情に思わず目を見開いた。

ん?

何言ってるのこの子。


「好み?なんでそうなるの」

「急に知らない奴連れ帰ってきてさ。それに何度か見とれてただろ?」

「え、見とれてた…?」


何度か目が離せなかったのは確かに事実だけど。

でもそれは珍しい顔立ちだなと思って見ていただけだ。
この子って、ぼんやりしているのか鋭いのか。


「具合の悪い人を助けるのは普通のことでしょ。
訳わからないこと言ってないでほら、私達も食べちゃうよ」


ふーん、と素っ気ない返事をする弟を横目に、2人分の膳を土間から運んで居間へ腰を下ろした。

いただきます、と手を合わせてから雑炊を口にすると優しい風味が口に広がった。
お世辞にも豪華な食事とは言えないけれど、胃にも消化にも良いことは間違いない。


異人さんの…
リヴァイさんの口に合うだろうか。
食べられるだろうか。


雪彦と並んで食事をしながらも、それだけが気掛かりだった。

私も大概お節介の世話焼きかな。
雪彦のことを偉そうに言えない。

押しつけがましくならないように気をつけないといけない。

西洋では具合が悪いときどんなものを食べるんだろう。
お母さんが帰ってきたら聞いてみようかな。



  


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