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 アリビンゲーブ 28

その後、私をやっと離した兵長は何も言わずに浴室へと消えて行った。

水音が小さく聞こえ始める。

身体も、頭も靄がかかったようにぼんやりとしていた。
手も足も小刻みに震えて上手く力が入らない。
このまま眠ってしまいそうなくらい気怠いけれど、そうはしていられない。

時計の針はいつも目覚める時間より一時間早い時刻を指していた。

体を起こして団服を身に着ける。
ブーツまでしっかり履くと、兵長が戻る前に部屋を飛び出した。

小走りに宿舎まで駆けながら自分の身体を抱きしめる。

彼に、抱かれた身体。

まだ体中に彼の感触が残っていて
くすぐったいような、この感覚をいつまでも閉じ込めておきたいような不思議な気持ち。

ふと前を見ると、本部と宿舎を繋ぐ通り道のベンチに一人の兵士が腰掛けているのが目に入った。


短めの金髪の男。

こちらに背を向けているので顔は見えない。
背中には盾とユニコーンの紋章。
憲兵団だ。

人の事をどうこう言える立場ではないが、こんな早朝に何をしているんだろう。
一瞬疑問に思ったが、宿舎に着いて浴室に駆け込んだ時にはそんな事もきれいさっぱり忘れてしまっていた。

ばしゃ、と冷たい水で顔を洗う。

『襲いやしねぇよ…』

あ。

唐突に思い出した彼の言葉。
『前言撤回』はあのことを言っていたのか…。

ーーーーーーーーーー

リヴァイが室内に戻ると、既に彼女の姿はそこにはなかった。
小さく舌打ちをすると荒々しく団服を身に着ける。

やっと自分から進んで来るようになったかと思えば、何故か逃げるように出ていく。

睡眠不足やらなんやらで無理をさせているのは分かっていた。
ただでさえ新兵たちは厳しい訓練だけで相当疲弊するものだ。
体が辛いのならそう言えばいいものを、とリヴァイは小さく思う。

理由なんてなんとでもなる。
回復するまで、ここにいればいい。



  


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