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 サルタナ 40

そのハンジがいう人物が、いつもぼんやりしているようなエマのことなのかそちらの方がリヴァイには気になったのだが。

それをもう一度顔に出すことはせず、心底面倒臭いような質問に、リヴァイは隠しもせずに溜息をひとつ吐いた。

眉間の皺は相変わらず寄せたままだ。


「言っただろうが。
あいつの為だけじゃない。
あの場は俺にとって利でもある」


もう一度そう繰り返すリヴァイの答えは全く当たり障りのないものだ。
ハンジは期待はずれといった体で肩を竦めた。


「…………そう。なんだ。
それはそれでつまらないなぁ、なんて」

「は?」


不機嫌そうな声を出したものの、リヴァイはハンジの戯れに一々付き合う気もなかった。

ハンジの着想や推論はそれなりに聞けるものだが、如何せん発想が時折ぶっ飛んでいることがある。

巨人関係に然り、特有の理論に然り。
そういう時はまともに返事をしない方がいい相手だと、リヴァイは痛いほど自身の経験から学んでいた。



「あ、そうそう、ところでリヴァイ。
例のあの事件のことだけど。
もちろん皆には口外してないんだけどね、やっぱり私はどこかから漏れる前に正確に公表した方がいいと思う」


ハンジの脳裏には、先日話したフランカとエマの顔が浮かんでいた。

どんなに隠してもその内に噂は回るものだ。
今は医療班の人手不足と娼館問題だけが専らの噂のようだけれど、きっとそのうちに、もう一つの方もどこかから漏れるんだろう。


例の事件。
それは兵団内で少し前から立て続けに起こっているものだった。


「まぁ、そうすべきなんだろうがな。
今の俺達に決定権は無い。
警備の手配はエルヴィンが済ませてるはすだ。
兵士への注意通達は今週中にするんだろ?」


「ああ……さすがに、こんなに何度も続けばね。
全てを警備するのは不可能だから、取り敢えず現時点では女性宿舎とその周りだけかな。
一人で出歩くなっていうだけの伝達もどうかと思うけどね。
女性だけにでも言うべきだと思うなぁ」


ちっ、とリヴァイが舌打ちを零す。


「エルヴィンも王都に呼び戻されたきり音沙汰も無い。
どこも人手が足りてねぇこのクソ忙しい時に……」



女性宿舎とその周辺。

警備を担当する部隊にも勿論詳細は知らされておらず、ただ厳重警備をしろという指示だけが渡されている。

出入り口を見張るように常に二人一組で配置された警備。
そのことに気付いている調査兵団兵士が何人いるだろうか。

余計な不安感を煽らない為に、そして模倣犯を増やさない為にもという名目だが、通例であれば事件が起これば更なる被害者を増やさない為にも公表されるものだ。

今回の場合は即座に上から箝口令が敷かれて、兵団内でその事件の詳細を知る者は少ない。
かく言うリヴァイもハンジも、王都へ向かおうとしていたエルヴィンから事件のことを聞いたばかりだった。
少し遅れて調査兵団の主力がエルヴィンからの連絡を待ち王都にて合流する予定だったのだが、それも出来ずにいた。

その一連の箝口令までの判断が一体どこから下されたのか定かでもなく、エルヴィンとの連絡も途絶えたまま今、動こうにも動けないのが現状だった。


被害者は完全に隔離されていることだし、その事件が起こったことすら一般兵士達は気付いていないだろう。

それでも加害者は確実にこの兵団内にいるはずなのだ。



「兵団内での連続強姦事件。
しかも連続でなんて不祥事続きもいいとこだ……これきり何も起きなきゃいいけど」



難しい顔をして思案を巡らせるハンジに対して、リヴァイは黙ったまま手元の書類に目線を戻した。



  


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