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 サルタナ 26

それから二週間。

私は彼と出会ってから初めての事態に直面していた。

業務や訓練を行う傍らに。
またはふとした休憩時間に。

それでも駄目ならと、半ばヤケになって暇が出来る度にあの部屋を覗いてみても。
更には夜間、あの森の演習場にも出向いてみるけれど、結果はどれも芳しくなかった。

探しているその気配がない。



会いたくないときには会えるのに、こうしていざ会おうと思うとこんなに難しいなんて。


彼とあの部屋で会ってから私は色々と考え、ある決心を固めていた。
そのためにはどうしても彼と話す必要があるのだ。


彼に自分から会おうとして、更にはその姿を捜し歩くなんて初めてだった。

彼も私も所属する班が変わり、私も自分の班を持つ立場になったのでもう交代の時間にすれ違うこともなくなっていた。
念のため、とその時間帯に森の訓練場に顔を出してみたけれど、やはり空振りだった。


兵士長就任からまだ日も浅いためか、それとも兵士長という役職自体が新設されたものだからか、とにかく彼専用の執務室というものもない。
彼と話をしようと思うと、どうしても敷地内で捕まえるしかないのだった。

折角辿り着いた新たな決意。
なのに、それを伝える相手にさっぱり会えない。



どうしたものかと通常通りの一日をこなしながら、何気なく本部内の廊下を歩き、ある一室を通り過ぎたときだった。


(あれ?今の…!)


視界の端にその姿を見た気がして、足を止めた。

三歩ほど戻ってみて、やはりそれが彼だと確信した。
開け放たれた扉の先に、腕を組んで机に寄りかかる姿が見える。


「あの、兵長───」


後先考えずにそう声を掛けてしまい、彼の瞳がこちらへ向けられる。

兵長と私、どちらも声を発する前に。


「あれ?
もしかしてまたリヴァイにお客さんかな」


そのどちらでもない声がした。


はっとして彼の向かい側に目を向けると、部屋の扉に隠れて見えなかったが室内にもう一人いることに気がついた。

二人で何か話していたらしい。

快活そうな特徴のある声に、眼鏡。それから高い位置でひとつに留められた焦げ茶色の髪。

彼の向かい側に立っていたのは、ハンジ分隊長だった。

確認してから声を掛ければよかったと瞬時に反省する。


「あ、お話中にお邪魔してすいません…!」


ハンジ分隊長とは、何度か挨拶を交わしたことがある程度だ。

彼女の方はきっと私の名前も知らないだろう。


「いやいや、いいんだよ!
リヴァイに何か用事かな?
あれだったら、後での方がいいかも。」


入り口近くにいたハンジさんはそう言って、こちらに少し身を寄せた。
そして、小声で「いまめちゃくちゃ機嫌が悪そうだから」と彼に聞こえないように忠告してくれた。


そ、それは。
是非とも関わりあいたくないタイミングです。


すぐにもう一度謝って立ち去ろうとしたけれど、それまで黙っていた彼が不意に声を出した。


「ハンジ。そいつは別だ」


「「え?」」と今度は、私とハンジさんの声が綺麗に重なった。



  


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