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 ブバルディア 08

激しく肌を味わっては、痛みだけを感じさせない様に時折胸や身体中の敏感なところに指を伸ばしては触れていく。

浅く深く強弱をつけて揺さぶると、エマは刺激を堪える様に唇を噛み締めた。


その唇を開かせ口内に指を差し入れて、奥歯から舌の付け根まで捕まえる様に押さえ込むと一瞬苦しそうに目が細められて、ついで暖かな唾液が溢れては指ごと呑み込んでいく。


「ふ、ぅ……っ」


くちゅ、と小さな水音を立てる度に苦しそうにこちらを見上げる仕草に、堪らず唇を重ねた。

自分の指先に滴る唾液や、耐え切れず溢れそうな泪を躊躇なく舌で絡め取る自分に自分でも内心驚く。
今まで一度でも他人をこんな風にしたいと思ったことがあっただろうか。


他の誰にも抱かない感情がふつふつと湧き上がる。
エマに触れると、今までの自分の中の概念が簡単にも崩れ去っていく。


あまり痛くはしたくない、と思いながらも激しく打ち付けて欲望の程をぶちまけてしまいたいとも思ってしまう。

耳元で囁くたびに肌が揺れて、その瞳が快感に歪む。
その素直な反応に図らずもふと満足げな笑みをひとつ零して、リヴァイはもう一度唇をエマの耳に寄せた。

内も外も。
汗ばむ肌も、唇も、吐息とともに漏れる声も。


「……お前は、どこもかしこも柔らけぇな…」


結局誘惑に負けて柔い肌に指を食い込ませ、そうしたいと思うまま引き寄せて、その内側を気が済むまで味わい尽くした。

暖かな鼓動の奥に熱い欲を注ぎ込んで。

外に出すべきかとも迷ったのは一瞬だった。
どうなったとしても最早手放す気は無い、と直ぐに思い直して抱き寄せる腕に力を入れた。






ずるりと脱力して自分の首元に頭を埋める逞しい体を、エマは腕を回して抱き締めた。

お互い荒くなったままの呼吸を整えながら、もう一度身体を抱き締め合う。

どれくらいそうしていたのか。
短い時間だと思ったが、そうしていると不意にエマの腕が解けていった。

ふとリヴァイが顔を上げると栗色の長い睫毛は既に静かに伏せられていて、浅かった呼吸が途切れ途切れに深く変わっていく。

紅潮した頬と同じ様に白い肌に紅みが差したまま、身体中から徐々にするりと力が抜けていった。



リヴァイはその様子をすぐ近くから見守って、完全に落ち着いた呼吸を聞き届けてから乱れていた栗色の髪を静かに整えてやる。


その身体に寝具を掛けてやり、窓際の蝋燭を吹き消すともう一度ベッドへ戻った。

ふと見るとエマの手がその身体の横に緩く開かれたままになっているのが目に入る。

寝具の下に自身の体を滑り込ませ、枕の上から頬杖をついて月明かりだけに照らされる寝顔を見下ろした。

昔から黙っていれば大人びて見えることがあった。
その整った寝顔は、少し大人びた以外はあまり変わらない。

伏せられた睫毛が影を作って、陶器のような肌は透き通り無機質な作り物のようにも見える。



口を開けばまだ少しあどけなさが残る印象なのも変わらない。

思えば、あの夜に。
寝顔に唇を寄せた時から不思議な感情は始まっていたのかも知れない。

出来ればあまり深入りしたくない、泣かせたくないと思ったこともあったが、いつの間にか自分のことで泣けばいいと歪んだ感情も抱くようになっていた。


リヴァイは少し考えるようにしてから、その細い指に自分の指を絡ませる。


「………ん…」

「……!」


薄く漏れた吐息と、だがそれより微かに握り返されたことにリヴァイは静かに息を詰めた。

起きてーーーいるわけではない。
無意識だ。

無意識に握り返すものなのか?


「………ィ…」


静かに耳を擽るのは間違いなく自分の名前で。
リヴァイは柄にもなくその手を握りしめ、強く引いて体ごと引き寄せた。


甘えられているのはこちらで、まだ少女とも言える若い温もりに頼られているだけだ。
それなのに、逆に受け入れられているのだとも感じることが出来る。

それがなぜこんなにも胸に響くのか。

完全にその体温を預けて、信頼し切ったまま腕の中で眠りについてくれるのがこんなにも堪らない気持ちにさせる。




一度だけ寝かしつけたあの夜から、何度かこうして安心させるように言葉を聞かせてきた。

壁外へ向かう時も。
壁外から帰って、こいつに迎えられた時も。
あの壁外の巨大樹の森でも。


昔から心配ばかりで。
こいつはもう少し気楽に物事を捉えるくらいでいいと思うが、どうも性格的なものらしい。
心配性かと思えば無鉄砲で、空回りしては落ち込んで。
なんでそこで、と言いたくなるくらい呑気なところもある。
何度言っても分かっていないようだ。



いつになったら、何と言えばしっかりこいつに伝わるのか。



大丈夫だ。
安心していい。




「………お前を離さないから、心配するな」




夜も更けて、空の色が一層と濃くなる。


抱き締めている温もりにいつの間にか抱き締められて、月明かりが朝日に変わるまで暖かい体温に微睡んだ。







−−−−−−−−−



次の日の朝目を覚ましたエマは、リヴァイの思った通り足腰の痛みから満足に立ち上がることも出来なくてベッドの上で半泣きになったけれど、それはまた別のお話───。










ブバルディア
おわり



    


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