△ ナカロマ 48
まさに、その通り。
人類の役にも、彼の役にも何にも立たないまま。
…立てない、まま。
ずきずきと左足から脈を打つ音が全身を支配する。
頭がぼおっとしてきた。
骨折なんだろうな、とぼんやり思った。
骨を折ると発熱すると聞いたことがある。
そんな話も、やっぱりリヴァイから聞いたような気がする。
彼自身は大きな怪我とは無縁だけど、傷はいくつも出来ているみたいだし、部下の兵士が怪我をしてしまうこともあるんだろう。
不愛想で、滅多に笑わなくて、でもちゃんと周りを見ていて手を差し伸べてくれる。
…私にも、私じゃなくても。
身を守るためにも神経質で、言葉は乱暴かもしれないけど他人の痛みを分かってくれて。
誰よりも兵団のことを、人類の未来を考えて常に前を向いている彼の姿を想う。
他の人のものだなんて、私には耐えられない。
見たくないし、聞きたくない。
リヴァイの内側に隠された真っ赤な熱。
その熱さも、さりげなく触れる癖も、抱き着くと一拍間を置いてからも抱きしめかえしてくれるその腕も。
他の人のものになった彼なんて、知りたくない。
どうしたって汚い感情が出てくるから、リヴァイに会えないままでよかった。
本当に、親戚の子供だと思って接してくれていたのかもしれない。
彼の家族の話は聞いたことがないから、家族ってこんなものなのかなという彼なりの親愛の証だったのかも。
心配をしてくれたり。
抱きしめ返してくれたり。
むかしから期待して、勘違いして、勝手にショックを受けてばっかりだった。
なんだ。
私って最後までこんな感じなんだ。
結局なんにも分かってなかった。
壁内にいても、壁外でも、憲兵団でも、調査兵団でも。
いつもいつも、私は彼のことばかり。
…いま一体どれくらいなんだろう。
生き残った皆は無事に壁に帰れた頃かな。
エルヴィンもリヴァイも、私が実は壁外に来ていたと聞いてどんな顔をするだろう。
しかも、戻らないと聞いたら。
怒るかな、分隊長には怒らないでほしいな。
私は実力を認めてもらえてうれしかったんだから。
エルヴィンはきっと悲しんでくれるだろう。
リヴァイは…?
ペトラさんとの話題に出してくれたりするんだろうか。
だから言ったのに、自分から死にに行くなんてバカな奴だ、なんて言うのかな。
俺があれだけ忠告してわざわざ見習い枠にまでしてやったのに。
なんて…
そうやって、
怒ってから。
…少しは、悲しんでくれるかな。