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 ナカロマ 14


「…ふぅ。」

やっと仕事が一段落して、遅めの昼休憩をもらって食堂へと向かう。
まばらに兵士が出入りする中、一人座って昼食を取っていると、誰かが向かいの席にドサッと乱暴に腰掛けた。

一瞬びくっとしながらも顔を上げると、目線を逸らしたままのリヴァイだった。
彼は足を大きく組み、右手をテーブルの上にどんと置いた。

いつにも増して横柄な態度。
視線は辺りを見渡していて…誰か探してでもいるようだ。
ただでさえリヴァイは目立つのだから、周りの兵士もちらちらと不機嫌そうな彼の動向を伺っている。

「リヴァイ?」

「どうだ。仕事は」

興味も無さそうに彼は問う。

「頑張ってるけど…。どうしたの?」

何か私仕事でミスした?

「…いや」

彼の目当ての兵士はいなかったのか、彼はやっと私に視線を戻した。

「お前、顔色が良く無いがしっかり寝ているのか」

「えっ。本当?
確かにここに来てから睡眠時間は短いかも…」

慌てて自分の頬に手を当てると、確かに冷んやりとしていた。
血色が良いとは言えないだろう。
顔色をリヴァイに言われたくないが、新しい環境と仕事に緊張が続いているのも確かだ。
働くならば体調管理も自己責任なのだから、皆を裏から支えるためにも体調を崩さないようにしなければ。

「昔っから悩み事なんて無さそうな顔してんだからな…夜くらいはしっかり休め。
一丁前に悩むな。
どうせくだらないことでも考えてんだろ」

……。
一瞬真剣に悩んだというのに。
なにか、とっても失礼な事言われた気がする。
夜はほとんどあなたのこと考えてます、なんて言えずにじろりと視線を返す。
リヴァイにとってはくだらないことかも知れないけど、私にとってはくだらなくなんて…ないんだから。

「リヴァイに言われたくないよ。
そっちこそ疲れてるみたいだけど、しっかり寝てるの?」

私なんかより忙しそうなのはリヴァイの方だ。
会議に、報告書に、部下の管理にいつも色々な仕事をこなしているらしい。
同じように本部に出入りしていても姿を垣間見ることさえ少ない。
私以上に動き回っているか…書類の整理に追われているか。
どちらにしても休憩している場面も見かけないのだから、多忙なのは目に見えている。
…談話室や給仕室以外で休憩しているのならば話は別だが。

上とのやり取りは、さぞ気力を使うことだろう。
彼は、質問の答えを少し考えていたようだ。

「まぁ…支障がない程度にはな」

…やっぱり、自分こそあまり寝ていないんじゃない。

彼にこそゆっくり休みを取って欲しいのに。
前々から彼は夜遅くまで本か何かを読んでいて、朝早く起きるタイプだった。

実際に彼が…私がいたエルヴィンの実家に泊まることは無かったが、話の端々でそういう人なんだとは分かっていた。

一度だけ、夜遅くにエルヴィンとリヴァイが来ていたことがあった。

既に眠っていた私は、二人の小さな話し声で目を覚まし、寝衣のままで廊下へと出た。
二人で何やら深刻そうな話をしていたのが、少しだけ開いたままの客室の扉から灯りと共に漏れていた。

深く考えずにその扉を軽く押してしまった。

ぎっ、と音を立てた扉に、体が身震いした。
その音にエルヴィンが顔を上げ、リヴァイもすぐに私を見た。


「エマ……」


そう私の名を呼んだリヴァイの表情はいつもの彼だったのを見て、泣きそうなほど安堵したのを覚えている。

だって扉の隙間から一瞬だけ見えた彼の横顔は、
今まで見た事がないほど冷たいものだったからーーーーー。



  


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