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 クレオメ

思ったより早く寝息に変わったな、と思いながらもリヴァイはもう一度軽く髪を撫でた。



握り返すようにしていた両手のひらからは今はもう力も抜けて、手を離すことも簡単に出来そうだ。




『───リヴァイ?』




階下の書斎からエルヴィンの声が小さく響いた。


静かに立ち上がろうとして手を離した瞬間に、もう一度軽く手を握られて思わず握り返した。



…起こしたか、と思ったが。


呼吸は規則正しい寝息のままで、すぐに手の力も抜けたのでそうではなかったようだ。

立ち上がりかけたが、なんとなくもう一度座り直す。





そのまま暫くの間ちらちらと揺れる蝋燭の火に照らされる寝顔を見ていたが、不意にドサドサッという多少大きめの音がした。

顔を上げると、エルヴィンが落とした本を拾いながら少し開いていたままの扉を開けたところだった。


今の音では起きてしまっただろう、とエマの寝顔に目線を戻すが、先程と何ら変わりない。

…多少の物音では全く起きないのか。
それに気付き、思わずふと軽く頬が緩んだ。



『ここにいたか、探したよ』



部屋の中を覗き込んだエルヴィンの視線はこちらと目を合わせようとしないリヴァイの顔と、エマの寝顔と握られた手を順に見てから、もう一度リヴァイの顔に戻った。


エルヴィンは少し不思議そうな表情を浮かべてから、柔らかく笑みを覗かせる。




『……寝付いたばかりだ、大きな音を出すな』


『悪かった。
…ハハ、しかし子供は苦手と思っていたが。珍しいな』


『…今行く』





からかわれそうな雰囲気を察したリヴァイが早目に返事を被せると、エルヴィンも柔らく細めた横目でこちらを見やってから階段を降りていった。



一拍間を置いてリヴァイはそっと手を外したが、今度はエマの手が動くことは無かった。



それを見届けて今度こそ立ち上がり、顔に掛かった栗色の柔らかい一筋の髪をよけてやる。




リヴァイは少し考えるようにしてから
ゆっくりと、エマの額に音もなく唇を寄せた───。








クレオメ
おわり



      


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