無自覚サド

「き・り・が・く・れぇぇぇっ!!」
ネオジャパンの合宿場に、改のアルトな声が響き渡る。
彼は今現在怒っていた。原因を作ったのは、先ほどから声を張り上げて名前を呼んでいるチームメイトの霧隠のイタズラだ。
「霧隠!」
雲のように軽やかにうねっているピンクの髪を見つけると、改はそれに向かって即座に走った。
「どうした、改?」
「どうしたじゃない!お前だろう、洗濯物あんな風にしたのはっ!!」
改が霧隠を問い詰めるが、霧隠は「ん?」と首をかしげる。数秒たってから「あぁ!」と何かを思い出したかのように声を上げた。
「何で、干した洗濯物全部裏返しにしたんだ!?」
「面白そうだからに決まってんだろー?」
にっと明るく笑う霧隠だったが、その笑顔は改の神経を逆撫でするだけだった。
「裏返しにする暇があったら、入れて畳め!!」
「うぇ〜・・・やだなぁーそういう面倒なの」
「ぐだぐだ言うな!ったく毎日毎日飽きずによくもまぁイタズラばっかしやがって・・・」
と言ってから更に改は「大体、お前は・・・」と説教の代表のような一節を持ってきた。完全に説教する体制だ。
説教は嫌だ。そこで霧隠は逃げた。
彼の持つ俊足と忍術を使われては、もうお終いだ。この合宿場内に必ずいるので、探し出すことは可能だが、発見したら、また逃げられるのだ。そして、また見つけても逃げられ・・・という具合にイタチごっこに労力と時間を費やすなら、霧隠のイタズラの後始末でもしていた方が有益だ。
「・・・ったく・・・」
はぁっと一人、ため息をつく改。
しぶしぶ、改は裏返しにされた洗濯物を取り入れ、元に戻しながら畳み始めた。


***


「霧隠センパイも毎日飽きませんね・・・」
改から逃げ切ったところで出くわした成神は、霧隠から事情を聴くと、そう言った。
「何が?」
「イタズラ」
「お前だって、いろいろと改にちょっかい出してんじゃん、成神ー」
霧隠と成神。しょっちゅうイタズラばっかりする、この二人組は既に改のブラックリストに登録済みだ。
「だって改センパイ、いちいちあんなに騒いで何か可愛いじゃないっすか」
「だよなーちょっかい出したくなるよなーあんなにかわいいとさ!」
「・・・ドSっすねセンパイ・・・」
成神の言葉に霧隠は首をかしげた。
「どえすってなんだ?」
「センパイみたいな人のことっスよ」
「えー?よくわかんねーよ」

無自覚でサディストの気質があるとは大分たちが悪い。成神はそんな霧隠に好かれる改に少し同情した。




―――――
2011.5.10
これもちょっと古い作品。
霧隠は、Sなのかただのいたずらっ子なのか未だに謀りかねてる。

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