I don't say "don't follow,but"...

神威大門東郷学園はかつて無いざわめきを見せていた。
バタバタと廊下で人が機材や食料の入った段ボールを抱えて走り、屋上では所狭しと寝袋が敷き詰められ、体育館はメカニックがパーツや工具を広げ、全てのLBXを整備する。
エゼルダーム、もといバンデット―否、ワールドセイバーが正体を現し、セカンドワールドの事実を暴露したその日、神威大門学園の生徒たちは決起した。セカンドワールドを守ろうと、世界を守ろうと。
だからこそ、今こうして、彼らは自分のなすべきことを自覚し、行動へと移している。

しかし、大人たちはそれを快く思わず、かといって手も口も出さず、ただただ見ていた。
職員室に集まり、険しい顔をしてこの様子について語るしかできなかった。いや、しなかった。何をすべきか、彼らには分からなかった。
セカンドワールドの運営側として、子供達を止めることも出来た。かといって、真実を隠し続けていた身としては、今更教師として顔を合わせることも出来ない。

はぁ、と誰かがまたため息をつく中、職員室に、この場にいなかった大人が一人入ってきた。
「失礼。保健室の包帯と絆創膏が切れかけている。事務員に注文を頼みたい」
保険医の日暮真尋だった。いつも通りの口調で、この状況にも動じず、職員室よりも「仕事場」と呼べる保健室に待機し、平然と備品の注文に来たのだった。
「ん?なにか不穏な空気だな」
とぼけたように、クマの入った目で職員室を見回す。
「この状況では仕方がないだろう!」
「意味が分からん」
「貴方は、この状況を何とも思わないのか?」
「だから、『この状況』とは何だ?」
「子供達が勝手にワールドセイバーと争おうとしているのですよ?」
納得したように「あぁ」と日暮は呟いた。

「子供はいつか大人になって、世界の真実も嘘も色んなことを知ることになるだろうな…。ただ、あいつらは、その時期がちょっと早く来て、自分たちでワールドセイバーに立ち向かおうと決めただけ。そうじゃないのか?」

「だから、この状況がなんだ」とでも今の状況を否定するように日暮は言った。

日暮にとって、この状況はいつものウォータイムと変わらなかった。
真実を隠していた贖罪をするつもりでもなく、教師として成長を見守るでもない。
生徒の身長が伸びたのを記録するように、ただ人が成長するという、生理的なものとして見ていた。

「今の私の仕事は、保健室に待機して、やってきた怪我人の世話をすること。まぁ、あいつらが保健室に来ないのが一番いいんだがな」
苦笑して「じゃあ備品お願いします」と念を押して、日暮は職員室を出て行った。




―――――
2013.11.14
日暮先生って世界を達観〜とまではいかないけれど、真実を受け入れたうえで自分のペースを保っている感じがするということで、文に起こしてみました。
何か自分の主張は言ってそうで怖いんですが…。日暮先生が言いたかったこと伝わるかなーと不安です。
生徒の成長には関心も何もしないよ、だから今の状況も何とも思わないよってスタンス。

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