QUIZ
マンネリ化を打破するためにはコスチュームプレイが一番だと、長年の付き合いである女友達は言っていた。
彼女自身がそれで恋人とうまくやっているのだから。
『名もセクシーな格好で彼氏のことを誘惑しちゃいなよ』
小悪魔のような笑みを浮かべて、彼女はわたしにそう言い残す。
確かに友人の言うとおりだけれども。問題は、わたしの恋人に視覚的な誘惑は無意味だということなのよね…。
と、いうのも。
最近…なんだか、ワンパターンで。
大好きな彼とだから、いいけれど。やっぱり物足りなさがあって。
もっとドキドキしたいっていう、そんなことを考えちゃうわたしはわがままでどうしようもなく…えっち、なのかもしれない…。
大好きな黄泉さんと、もっともっとドキドキすることをしたいんだもの。…しょうがないよね。
そんな言い訳を自分にしながら、わたしは友人から勧められた服を片手に恋人の部屋を訪れた。
「おや、どうしましたか、名」
わたしが名乗るより早く黄泉さんはこちらへ体を向ける。
心なしかその表情は嬉しそう。口角、とか雰囲気や声音からそれが伝わってくる。
いつものように彼の隣に腰を下ろすと、肩に心地良い重みを感じる。
見なくってもわかるの。これは、黄泉さんがわたしにもたれかかってくれているって。
肩に頭を乗せて…そのまま顔をうずめる。その次は…。
「…名」
あまいこえ。
強請っているように聞こえさせているものの、その実は断らせない強い意志を感じさせる。
…あ、黄泉さん…シたいんだ…。
そう感じると同時に唇をふさがれる。触れるだけのキス、その次は啄むように深いキス。
キスに夢中になっているうちに、服が捲られて下着は露わになる。
驚く暇もなく、先端をつままれて。優しく揉みしだかれる。
与えられる快感にびくりと体が反応し、もっとしてほしくてしょうがなくなる。
だけど、これだといつもと同じになっちゃう。
それはそれでいいのかもしれない。だけどわたしは…
「あの…黄泉さん…ちょっと、待って……」
快感に溺れそうになりながら、言葉を紡ぐ。
言葉だけじゃなくて軽く身をよじって彼の拘束から逃れようとしながら。
そんなわたしの行動に明らかな不満を覚えた黄泉さんは、声音からもそれをにおわせる。
「……今更、待てと…?」
不満だけじゃない…わずかな戸惑いもうかがえた。
したくないわけじゃないの。ただ、いつも同じ、ワンパターンのセックスは…ちょっと嫌かなって。そんなわたしのわがままなの。
だけどそれをそのまま正直に言うこともできず、わたしは無言で立ち上がり。部屋の片隅に置いたままだった紙袋に手を伸ばす。
丁寧に畳まれたそれに袖を通し、するすると着替える。
目の見えない人に対してコスプレなんて効果ないかもしれない。
けどそれは普通だったらそうなるのであって、視覚以外の感覚に特化した彼ならひょっとすれば…というわたしの仮説。
「何をしているんですか?」
「…黄泉さん」
素早く着替え終わったわたしは、小走りに彼の元へ移動する。
抱きしめようとしたその腕を捕まえて、自分の胸元へ導く。
彼の大きくて綺麗な掌をわたしの胸に当てて、確かめるように触れさせる。
先刻とは違う感触に、彼は驚きを隠すことができないようで。
「…さっきと…違う、服…ですか…?
先ほどまではニット生地だったのに…今度は…絹…?」
胸に手を当てさせていたけれど、先刻と異なる触感に興味を抱いたのか。黄泉さんはわたしの体をまさぐるように触れる。
今までのセックスと明らかに違う触れ方。
性的な興味じゃなくて、純粋な興味の持ち方。
それがとてつもなく新鮮でわたしの心臓は大きくはねた。
「黄泉さん、わたしからクイズだよ…?」
「…え?」
「わたしが何を着ているのか、当てられたら。
そしたら、黄泉さんのしたいこと…全部してあげる」
「私の…したいこと…?」
黄泉さんはかみしめるようにわたしの言葉を繰り返す。
そしてにやりと口角をあげる。
その表情は今まで見たことないくらい妖艶で。それでいて肉食獣のような激しさを秘めているようで。
ああ、草食動物が捕食されるときってこんな気持ちなんだ…そんなことを考えてしまった。
と、同時にばたんと床に押し倒される。
上半身から下半身へと手が伸ばされる。そしてまさぐられる。
…その後どうなったか、って?
やっぱり黄泉さんの感覚はずば抜けているということを、改めて実感しました。
あまりにも恥ずかしかったから、思い出すだけで顔が真っ赤になっちゃうけれど…。
だけど今まで感じたことがないほどの快楽を覚えることができたのは事実。
黄泉さん自身も凄く嬉しそうだったし…よかったのかも。
今度、友人においしいケーキをプレゼントしてあげよう。
ドキドキする心臓をなんとかなだめながら、わたしはそう心に決めたのでした。
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ヒロインさんが何を着ているのかは皆様のご想像にお任せします。
そして今回も本番はおあずけですごめんなさいね。
謎の改行ェ…。修正しました。申し訳ありません。
2012.04.12