たまには許して
「うぉぉぉ!!!」
「えっ、どうしたの日勝くん?!」
その日、名が帰宅すると同棲している恋人・日勝の様子がおかしかった。
元々『知力25』だの『脳筋』だのと称されている彼だが、その評価は正当なものであると認識せざるをえない。
それもそうだ。
誰が想像できるだろうか。
玄関を開けたら、上半身裸の恋人が汗まみれで叫んでいるなどと。
「………」
くらり、軽く視界がぐらつくような感覚を名はおぼえる。
いったい何があったのか。
そんな当たり前の問い掛けすらためらいたくなってしまう。
(日勝くんの突拍子のなさは理解していたつもりだけど…やっぱり、すごいなぁ…)
そんなことをしっかり頭の片隅で考えているあたり、名も彼の行動に耐性がついてきた証拠だろうか。
最初のころはただただ唖然とするだけで感想というものが中々でなかったのだから。
「名ー!!おかえり!!会いたかったぜ!!!」
そんな放心状態の彼女に気付いているのかいないのか、日勝はキラキラと顔を輝かせながら名をその両腕で抱きしめる。
その日着用していたものがオープンネックのものだったからか、そのままの勢いで首筋にしっかりと口づけて。
当然、いきなりの行動に名は驚きを隠せず、軽い抵抗を示す。だが『最強』とも謳われる高原日勝の前では全く効果などなく。
むしろそれすら楽しむように日勝は何度も唇を、舌を、名の首に這わせる。
「ちょっ、ぁ…ま、まさるくん…な、に…っ…?」
「んー…?名と無性にこうしたくなってなー…」
「もぅ…日勝くんたら…こんな格好で…風邪ひいちゃうよ?」
「俺が風邪なんかに負けるわけないだろ?」
腕の中に閉じ込めていた彼女を少し解放するようにして、日勝は白い歯を見せる。
…馬鹿は風邪をひかないよね、とは。流石に口走ることは出来ない名であった。
「名ー…名ー」
「…ふふっ、今日は甘えん坊さんなんだね…?」
「おぅ。」
口調こそ普段のものとなんらかわりないのだが、名をしっかりとその両腕の中に閉じ込める。
後ろから抱きしめる体勢をとり、時折彼女の髪に顔を埋める。
「…くすぐったいよ、日勝くん…?」
「んー?」
勿論、名も本気で拒否している訳ではない。
こそばゆさは堪える事が出来ないのか、それだけを彼に訴える。
「だって名の抱き心地が良いんだから仕方ねーよ」
「…わたし、動けないんだけど?」
「うん」
「ご飯の仕度出来ないよ?」
「メシより今は名がいい」
そう言って首筋に吸い付く。
わざとらしく音を立て、彼女に縋る。
仕方なさそうに息を漏らし、名は日勝の腕を優しく撫でたのだった。
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日勝とイチャイチャしたかったんです。
2012.03.15