短編集 | ナノ


これでいきましょう!

私の恋人は、とても理解力のある素晴らしい女性だ。

もう一度言う。

私の恋人は。と て も 理 解 力 の あ る 女性だ。


…いや、理解力がある、というより、どう表現すればよいのか…



「黄泉さん黄泉さん!新しい変身ベルトが今月末発売みたいですよ!丁度この時期は特撮物が入れ替わる時期だからじゃんじゃんでますねっ!!」



所謂、特撮オタクという分類になる…のかもしれません。





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「ああでも、この変身ベルトも捨て難いけど、こっちのブレスレットのも素敵…!だけどベルトに比べたら、地味になっちゃうし……。黄泉さんっ!どっちがいいですかっ??」

「えっ?」


名はホビー雑誌を片手に目を輝かせながら黄泉に尋ねる。
瞳の中に星が見えるほどに、キラキラとしていた。


「(見えませんが…声音と雰囲気で、なんとなく読み取れますね…)」

そんな黄泉の心中など知らず、名はヒートアップしながらまだ続けている。


「でもこっちのベルトの方が楽しいかも!スイッチでな汎用性も高いし、こう、この球体を回すアクションを入れてもかっこよさ上がりますよね!」


黄泉さんは主人公ライダーか、それとも新しいライダーのかどっちがいいですか?

名は更に詰め寄る。


「ちょっ、落ち着いてください、ね?名」

ここまでヒートアップされてはたまらない。
自分は「正義のヒーロー」であって「正義のヒーローに憧れる者」ではないのだから。


名が偏見を持ったり、私を怖がったりしない事は非常に有り難く思っているし、感謝もしている。
だが、

「あとそれから、その新しいベルト、ちゃんと私でもつけられるかどうかが大切ですよ!」

「…い、言われてみれば…!」

「だから今のベルトのままで…」


ここまで暴走されては困ってしまう。


市販の玩具は当然大人向けになんて作られていない。
そこの違いを指摘すれば、名も大人しく引き下がってくれるだろう。

私はそう考えた。
名の勢いも落ち着いている。このまま押し切り、話の流れを変える!


「さぁ、美味しいコーヒーが手に入りましたからいっしょに…「それならっ!!!」


くわっ

と、いう擬音語が聞こえるくらいの勢いで名が立ち上がる。

そして素早く私の手をとり、してやったりと言わんばかりの声色でこう続けた。



「へ ん し ん ポーズ!決めましょっ!とびっきりカッコイイポーズ、たくさんありますからっ!!」




…神よ…どうしてこうなったのでしょう…






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黄泉さんはライダーと戦隊の両方を取り入れた斬新なお方。
ヒロインがオススメしたライダーベルトが何か分かった方は一緒に宇宙へ行きましょう。

2012.02.12



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