短編集 | ナノ


幸福

その日、皆の様子はおかしかった。

どのようにおかしいかと言うと、あからさまにわたしを避けていたのです。


朝食の支度をしようと台所に顔を出すと、珍しくアシュラさんとバッファさんが其処にいて。
名は二度寝でもしてろよ、と部屋へ押し戻されてしまった。

なんだか必死に台所へ入れないようにしているのが変に伝わったけど、そのことを尋ねても「気にするな!休め!」の一点張り。
ばたんと部屋に戻されたわたしはごろごろとベッドの上に転がるけれど、すぐ手持ち無沙汰になってしまう。


「…一体どうしたんだろう…」


わたしに内緒でみんな何か美味しいものでも食べているのかな?
アシュラさんとバッファさんだったらありえるようなありえないような。

そんなことよりも自分だけ除け者にされていることがとても悲しくて。
じわりと目元が熱くなった。

ちょっとだけ悔しくなって、部屋からこっそりと抜け出してみた。
意外にも、部屋の外には誰も居なかった。

「誰かがいるんじゃないかなって思ってたんですけど…」

まぁいいか、そう自分を納得させて、わたしはこそこそと歩き始める。




…と、隠密気取りでこそこそしていたのですが。

ものの数分でニンジャさんに見つかってしまいました。


「全く…屋敷内で何をそんなこそこそする必要があるでござるか…」

「それは…バッファさんとアシュラさんが…。。。」


朝一番、彼等にされたことをさらりとニンジャさんに説明すると、彼は穏やかな笑顔を浮かべて。
そしてぽむぽむとわたしの頭を撫でた。



「名、別にアシュラとバッファは名を除け者にしようとしていたわけではござらんよ?」


「そ、うですよね…」


「そうでござるよ」


にこりとニンジャさんは微笑む。

その笑顔を見ていたら、あの二人を疑ってしまった自分がとてもとても馬鹿に思えて。
わたしの表情も自然と緩んでいく。


二人でにこにこしてると、どたばたと他の皆がやってくる。

アシュラさんとバッファさんはさっき見たときの格好のまんまだったけど。

ブロくんとソルジャーさんは後ろ手に何かを隠し持っているのが見てすぐわかる状態だった。



「みんな、どうしたんですか?」



疑問に思ってそう尋ねたけれど、みんなの笑顔はそのまんま。

にこにこしながらブロくんとソルジャーさんは視線を合わせ、呼吸をあわせて。
そして高らかにこう叫んだ。




「おめでとう!!!」





ぱぁんと、辺りに響く破裂音。
なにを隠し持っているのかと思えば、彼らはクラッカーを持っていたのです。
それを同時に鳴らしたわけで。

わたしの頭上には色とりどりの紙ふぶきが。


なにがめでたいのかよくわからないわたしを余所に、皆はわいわいと盛り上がっている。


なんだか付いていけなくて、こそりとニンジャさんに尋ねてみたら。

「今日で名が来て丁度1ヶ月になる日でござるよ」と。



わたし自身忘れてしまっていたことなのに、皆はしっかり覚えていてくれていて。


こうやって祝ってもらえて、それがとても嬉しくて。


自分に出来る最高の笑顔を浮かべて、わたしはありがとう、と一言。






その後は皆で、アシュラさんとバッファさんの作ってくれたご飯を食べました。

二人の手料理は初めて食べたのですが、とてもオトコらしい料理でした。





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1000Hitありがとうございます!
感謝の気持ちなフリー夢です。宜しかったらお持ち帰り下さい。

微妙にニンジャ贔屓なのは仕様です。

ブロとソルジャーの出番が皆無状態でほんとすいませorz

08.11.26




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