決意表明
※主人公→常闇
※ヒーロー科1-Aクラスメイト設定
気がつくといつも目で追いかけていて、一言一句どうしようもなく気になって。
何かと理由をつけてそばにいたくて、一緒にいるときは隣にいるよう立ち回る。
「うん、名ちゃんそれ完全に恋だよ。恋しちゃってるよ」
「やっぱりそうだよねぇ………」
怒涛の職場体験が終了し、いつもの高校生活に戻ったある日。
入学当初からずっと気になっていたことをクラスメイトの女の子達に相談していた。
将来的には何らかの形で人々を救うヒーローになりたい一心で、必死に勉学・鍛錬に励み入学したのに。
まさか入学早々恋をしてしまうとは…こんなに自分が惚れっぽい人間だとは思いもしなかった。
「それにしてもなんで私に相談してくれたの?」
「三奈ちゃんに勘違いだよー!って思い切り笑い飛ばして欲しかったから…」
「えー!いくら私でもそんなの言わないよー!!」
「ご…ごめんね三奈ちゃん、いくらなんでも失礼すぎた…!」
だけどあっけらかんと笑い飛ばしてほしかったのは動かしようのない事実なわけで。
ただでさえ忙しい毎日を送っているのに、恋心に何から何まで左右されるのはちょっと、しんどい。
「別に悪いことじゃないけど思うけどな。相澤先生は入学したときにそんな暇ないぞーって言ってたけどさ。
人が人を好きになるなんて当たり前のことだし、あんまりマイナスに考えたらもったいないよー!」
「透ちゃん、ありがと…」
「よしよし、辛かったねぇ名ちゃんよしよし」
わたしの隣に座った透ちゃんは見えない手でポンポンとわたしの頭を撫でてくれる。
その暖かさにじんわりと胸が熱くなり、思わず彼女に抱きつく。
左隣に座っている三奈ちゃんもわたしの背中を撫でてくれた。
「それにしても…まさか名ちゃんが常闇に片思いをしてるなんてね…」
「ちょっ!三奈ちゃん、声、おっきいよ!!」
「大丈夫だいじょーぶ!みんなお昼ご飯に夢中で聞いてないってば!」
「そもそも名ちゃん、常闇くんのどういうところが好きになったの?」
わたしの抗議などものともせず、三奈ちゃんと透ちゃんはぐぐいと詰め寄ってくる。
二人の圧力に負けてしまい、ゆっくりと記憶を掘り起こしていった。
「…教室で初めて会った時、今から思えば多分一目惚れだったと思う…。
あの、鋭い目つきとクールなオーラがとにかくかっこよくて。中学時代周りに全然いなかったタイプで物凄くどきどきしたの。
個性把握テストやUSJのこととかもそうだけど、体育祭がすっごくかっこよくて…。
緑谷くんを信じてチームの為に戦ったり、その後の個人戦だって、もう、直視できないくらい眩しくて、素敵で。
だけど、好きかもって自覚したのは普段の会話かな。常闇くんって口数こそ少ないけど、凄く紳士的で。
相手のことを慮っているのが話していて伝わって来るの。そういう、周りのことを見て、対応できるとこ、心から尊敬できるし。
…そういうところ、かっこよくて、素敵だなって…」
「―・・ひゃー…」
「なんだか聴いてるこっちが恥ずかしくなってきた」
「もう、わたしだって恥ずかしいよぉ…。でも本当のことだもん
でも。好きだから付き合いたいっていうより、まず常闇くんの隣にいて相応しい女の子になりたいな。
その上で、その…恋人になれたら、嬉しいけど…まずは、色恋にうつつをぬかしすぎず、きちんと勉強も実技も頑張って、
…常闇くんに『すごいな』って言ってもらえるようになりたいな」
そう言い切ると、三奈ちゃんと透ちゃんはわたし越しに視線を合わせてすくっと立ち上がる。
「よし!私達だけじゃなくて、他のみんなにも協力してもらお!今日の放課後、空いてるかどうか聞きにいこ!」
「おー!!ほら名ちゃん、いこいこ!!」
「あっ、三奈ちゃん!!透ちゃん!!待って!」
勢いよくランチラッシュを後にする彼女たちにおいていかれぬよう、わたしも立ち上がり足早に立ち去った。
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「…一体どうしたものか…」
参った。こんなつもりはなかったのだが…。
いつも通りランチラッシュで昼食をとっていると、ふと聴き慣れた声が耳に入ってきた。
それがクラスメイト・芦戸のものだと認識したのと同時に、氏が恋をしているという言葉が直接届いた。
立ち去るタイミングを伺っていると、その相手がまさか俺だったとは…。
聞いてはいけない話を最初から最後まで聞いてしまったのだ。
「(まさか、氏も同じことを思っていたとは…)」
俺は顔に熱が集まっていくのを感じながら、紙パックのジュースを一気に飲み干した。
俺はこのあと、どんな顔をして教室に戻ればいいんだ。
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何度同じパターンをするんだと、仮にご指摘いただいたとしても
主人公→←相手の両片想いが大好きなんですごめんなさい。
2017.04.29