短編集 | ナノ


どうして嫌いになれないの? 02

2.きっと片想いのまま





『清水せんぱい!この記録ノートなんですけど、ちょっと見てもらっていいですか?

 せんぱいのまとめ方を参考にして、自分なりにやってみたんですけど…』


「わかった、もらってもいい?」


『はい!お願いしますっ!!』



女バレに入部するか、運動部のマネージャーをするか。
どっちにするか悩みに悩んだ結果、わたしは後者を選んだ。

バレーボールという競技をやりたくないというわけじゃあない。
もちろん今でもバレーは好きだし、体育の時間に取り上げられたりなんかしたら少なからずテンションは上がる。


だけど、プレーヤーとしての視点だけでバレーに接していたくない。
受験が終わって、つかの間の春休みを謳歌しているとき。心からそう思った。

テレビでやってる高校総体の中継なんかでは全く取り上げられたりしないけど
それでも、実際プレーしている選手達と、マネージャーも一緒に戦っている。

同じスポーツをコートの中から感じるのか。それとも外から見るのか。
それによってどんな知識や経験を得ることができるのか。

未知の世界にわたしの心は踊っていた。



…烏野を選んだのは、やっぱり、澤村せんぱいが進んだから。
道宮せんぱいがいるっていうのも心強く感じたけど、一番は、、うん。澤村せんぱい。


中学時代、一緒にわいわいしつつも。試合になると目つきも、何もかもががらりと変わったせんぱい。


この人は本当にバレーボールが大好きで、そして、大きな夢があるんだ。
そんな澤村せんぱいのことをずっとずっと尊敬していて。

いつしか、それは恋心に変わっていて。


正直わたし自身、この気持ちが恋なのか憧れなのかはたまた尊敬なのか判断に迷っているところはある。


『澤村せんぱいの彼女』として隣に立っていたい気持ちもあるし。

それと同じくらい、『可愛い後輩』という立場を捨てたくないという気持ちも、ある。





『(でもやっぱり、言えないよねぇ……)』





今の関係を崩したくない。

どれだけ考えても、何度考えても行き着く結果は常に同じこの答え。


わたしの自己満足で告白しても上手くいく保障なんてどこにもないし

なによりも、その結果中学時代から築き上げたこの関係を壊してしまっては元も子もない。




『(……わたしの、意気地なし)』




誰にも聞こえないよう、心の中でそう呟いて。

長く息を吐いた。







     自分から行動を起こさないと事態は良くも悪くもならないって、わかっているけどなぁ




  どうして嫌いになれないの?/HQ 澤村大地
   永遠恋夢。



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マネージャー談義。
部内恋愛をしようとしたとき、きっと潔子さんの存在は非常に大きいんだろうなと思います。

2015.6.26執筆

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