短編集 | ナノ


どうして嫌いになれないの? 01

1.あなたの背中を追い掛けて



『澤村せんぱい!お久しぶりです!』


「おお、中学の時以来だな!元気だったか?」

『もちろんですっ。澤村せんぱいが烏野行ったって聞いて、
 勉強頑張りました!受験ストレスで痩せました!わかります?』

「ははは、感じは変わったように思えるけどな。
 中学生から高校生になって、ちょっと大人っぽくなったんじゃないか?」



快活に笑いながら澤村せんぱいはそう言う。

大人っぽくなった、その一言に不覚にもどきりとする。

一瞬反応が遅れて、会話が途切れちゃいそうになったけど。
動揺を悟られたくないから、笑顔で上塗り。



『もー!お上手ですね、せんぱい!でも嬉しいですよぅ』

「こらこら、脇腹をつつくなって。
 で、どうするんだ?部活。またバレーか?」

『そうですねー…あ、結せんぱいって女バレです?』

「そうだよ。道宮もバレー部。
 俺としては、前みたいなコンビネーションをまた見たいけどな」

『あわー、澤村せんぱいからそんなこと言われたら悩んじゃいますねぇ。
 でも今すっごく悩んでるんですよー。最近、マネージャーとかも、いっかなって』

「ほう」

『3年間プレイしていたからこそ、違う視点からスポーツを楽しむのも面白そうで!』


「なるほど、そういう考え方もあるのか」


顎に手を当てて、せんぱいは感心そうに頷く。
その表情はどこか意外そうに見えて、ちょっとだけ心外。


『あー!意外って思ったでしょ、澤村せんぱい!ひっどー!

 わたしだって色々考えてるんですからね!!まったく!』

「ははは、すまんすまん。許せって」


太陽みたいな笑顔でせんぱいはそう言う。
2年前と同じように、わたしの頭をぽんぽんと優しく撫でて。


『もう!さっき大人っぽい、って言ってくれたのにすぐ子ども扱いして!』



…そう、抗議しても…澤村せんぱいはまったく動じない。
昔と同じ、「可愛い後輩」として接してくれる。


それはそれで嬉しいけれど。
やっぱり、わたしは。







     何のために烏野に入ったかなんて、やっぱり言えないや。




  どうして嫌いになれないの?/HQ 澤村大地
   永遠恋夢。




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大地さんはきっと男女隔たりなく接するんだろうなという妄想から。


2015.6.26執筆

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