短編集 | ナノ


君をたとえる3題 03




試験期間。


それは学生が学生らしく勉学に励むことを強いられる、俺にとっては地獄のような期間のことだ。

バレーができない。更に勉強をしなければならない。
こんな地獄があっていいだろうか。いや、ない。


だからといって手を抜くわけにはいかない。

赤点をとってしまうことだけは絶対に避けなければ。

補習をぶち込まれて、練習時間を削られるなんて俺はごめんだ。



東京遠征に遅れて参加したときに嫌というほどそれを実感した。




それに、学年の違うセンパイと会う貴重な機会なんだ。

一分一秒でも削られるのは、困る。





「あー…」




自室の椅子の背もたれに体重をかけて、俺はシャーペンを転がす。

集中力が、切れてしまった。しょうがない。

俺はテキストを開いたまま、まぶたを閉じる。

脳裏に映されるのは、センパイの顔。

部活中に見せてくれる花のような笑顔。



「…早く試験が終わればいいのに」




少しの期間、会えないだけでこんな気持ちにさせる。
まったくもって俺らしくない。

それほどまでにセンパイの存在は俺にとって大きいということか。


…知っているけど。改めて認識させられてしまった。

まるで俺が俺じゃないようなそんな感覚。


悪い病気にでもかかったみたいだ。






「(俺が病人だとすると、センパイはくすりってことか)」





我ながらいい発想だと思う。

確かに、センパイのあの笑顔は万病に効果がありそうだ。





「……ダメだ。




 会いたい」




小休止のつもりが、完全に集中が途切れてしまった。


病気を治すには早く薬を飲むべきだ。



そんなこと思いながら、俺は携帯電話を握り締めたのだった。












3

ぜんぶぜんぶ、君のこと

3.処方箋より良く効くくすり/影山飛雄


お題配布サイト:Fortune Fate





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わたしのなかで、影山氏はかなりがっついてそうなイメージがですね。ええ。

2015.6.26


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