短編集 | ナノ


君をたとえる3題 01

「ッハザァーッス!!!」




さわやかな朝にぴったりと言わんばかりの大きな大きな挨拶。

ちらりと声のする方へ視線を向けると、わんこみたいにふっわふわの髪をしたちっちゃい男子生徒が向かいで立っている会長に挨拶をしていた。

彼はとても元気がいいのに、会長は面食らってしまっているみたい。
鳩が豆鉄砲を食らったみたいにわたわたと、まごつきながら「お、おはよう、ございます」と返すのが精一杯みたいだった。

あらあら、と思いながらわたしの口角も上がる。


毎朝行われている、生徒会による朝の挨拶促進運動。
イマドキの高校生らしく、かったるそうに肩をすくめるだけの子もいるし、友達との会話や参考書に集中しすぎて完全無視の子もいる。

そんな人もいるなか、さっきのおちび君はいっつも全力で挨拶をしてくれる。

…いつもあのテンションだとたまにしんどく思えることもあるのだけれど、やっぱりこちらからの挨拶に対してあそこまで快活に返してもらえると気分がよくって。

思わず破顔してしまう。自然と、興味もわく。


と、いってもおちび君は運動部所属みたいで、生徒会の挨拶運とかち合うことは試験期間くらいしかないんだけど。


そんなことを考えながら、さらさらとバインダーにペンを走らせる。

時間は予鈴の10分程前。
そろそろ生徒会役員も教室に戻らなければならない。
じゃないとホームルームに間に合わないし。

活動報告書を作成するために必要な情報を箇条書きで列挙しておき、後でまとめやすいようにしておく。


そうは言っても内容はほぼ毎日同じようなもの。
今日は挨拶してくれる生徒が多かったとか、全体的に遅刻ギリギリの人が多かったとかそんなこと。


…今日はおちび君がいたから、そのことも書いておこうかな。

キラッキラの眩い笑顔を思い出しながらさらさらと書き出していく。




「何年生なのかな?」



いつもにこにこして、何事にも全力で取り組んでいそうな、名前も知らない彼のことを考えて、やっぱりわたしの頬はゆるむのだった。


3
 ぜんぶぜんぶ、君のこと

1.太陽よりも眩しいひかり/日向翔陽




お題配布サイト:Fortune Fate



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全然絡んでないとかそんなことを気にしてはいけない(使命感)

2015.6.26



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