短編集 | ナノ


駆引

血盟軍のリーダーでもあるキン肉マンソルジャーことキン肉アタルはカリスマ性に溢れた素晴らしい人物だ。


と、名は思っている。


勿論その通りな所もあるのだが、素直にそう思うことが難しいところもある。

それは何かといえば、ソルジャーの癖、ともいえる奇行である。


現に今、彼女はその奇行…セクハラ的行為の被害に遭っていた。


「あ、の…ソルジャーさん…これはなんですか?」

おそるおそる尋ねてみたが、ソルジャーはそんな彼女を快活に笑い飛ばした。


「はっはっは!見て分からないか、名!!」


「いえ…わかりますけど…。。なんなんですか、このサンタ服…」



おどおどとした名の手には真紅の衣装。
女の子向けのサンタクロースの衣装である。

それは見ればわかるのだが、名が疑問に思っているのは衣装自体のことについてではない。

その衣装を何のために自分に渡したのかが理解できないのであった。


「違う…違うぞ、名っ!それはただのサンタ服ではない!

…普通のサンタ服と違うところは着替えてみれば分かるだろう。さぁ、今すぐ着替えるんだ!」


息を荒げ、名に詰め寄る変態…もといソルジャー。
駄目だこいつはやくなんとかしないと。
口には出さないものの、そんなことを名が考えたと同時に。

自分よりもはるかに大きな体格のソルジャーが横薙ぎにぶっ倒れたのである。



「ぐはっ!!」


「きゃぁっ!!」



何が起こったかと思えば。

ニンジャがソルジャーの脇腹にドロップキックをお見舞いしたのであった。
当のニンジャは涼しい顔。一応とはいえソルジャーは彼の所属するチームのリーダーでもあるのだが。
そんなことを微塵も感じさせないくらい思い切りの良いキックであった。


「ソルジャー殿…もう少し自重という言葉を学ぶべきでござるよ…。」


聞こえていないかもしれないでござるがな、と吐き捨てるように彼は呟き、呆気に取られたままの名に向き直る。

「大丈夫だったか?名?」

「わたしは大丈夫…ですけど…いいんですか?ソルジャーさん…」

「大丈夫でござるよ。手加減はしたでござる」


にこりと微笑むニンジャであったが、ちらりとのぞいたソルジャーの口元からは仄かに紅い液体が見えたような見えなかったような。

きっとそれは指摘しちゃ駄目なことなんだ、うん。と名は自分自身をそのように納得させてもうこのことに触れないでおこうと思ったのだ。



「ところで…それは何でござるか?」


「分からないんですけど…サンタ服みたいです」


「なるほど、くりすます、というやつでござるからな」


あ、クリスマスの存在はニンジャさん知ってたんだ。などと考えつつ。
名は些か迷っていた。先ほどは余りにも変にソルジャーが迫ってきたため、拒否してしまったが。
やはり名も女である。ちらりと見た限り、この服は非常に可愛らしく、着てみたい!という欲求が沸々と。


「名は、それをどうするのでござるか?」

「ふぇ?!…えっと…その…」


急に自分が考えていたことをニンジャに振られ、名は焦ってしまった。

どうしよう、具体的にこの服をどうするか考えていなかったために彼女は余計に焦った。


「着てみればいいと思うでござるよ」


にこりと、ニンジャが微笑む。
その微笑は他の血盟メンバーが見たことのない、とても穏やかなもの。

卑怯だ、と名は思った。

そんな顔をされたら、逆らえない。


「…恥ずかしいから…ニンジャさんにだけにしか見せません…」


「元より承知。それに…他の奴らに見せるつもりも毛頭ないがな」


ふ、っと彼の微笑みが黒いそれに変わる。
それと同時にニンジャの腕がするりと名の腰元へ伸びる。

そして、引き寄せられ、額に口付け。


名は聞き逃さなかった。ニンジャの口調が一瞬変わっていたことに。
彼はいつもこうなのだ。自分と二人きりになると、一人称が変わったり、口調が変わったりする。
そこにいつも自分はどきどきしてしまう。卑怯である。不公平である、と常々思っていた。


「(いつも余裕のニンジャさんも…この服着てみたら余裕なくなっちゃうのかな…?)」


どきどきしながら名は更に考える。

余裕の無くなった彼、というのも非常に見てみたい!という純粋な好奇心。
ゆえに、少しだけ積極的になってみようと、そう思わせたクリスマスだった。







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所謂クリスマスフリーというやつです。
やっぱりニンジャ夢になりました。自分はニンジャがどれだけ好きなんだww

フリーとかいうものなので、お持ち帰りは自由です。フォトショが機嫌損ねたので、フリー絵が間に合わなさそうですww

掲載の場合、「Triste」へのリンクと、池上の名前を記載してくださいまし。よろしくお願いします。


皆様、良い聖夜を。


08.12.23


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