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▼ 水の中燃ゆる炎に似て

有り得ないファンタジー、それが僕の恋。
君が僕を好きになる筈なんて無くて、僕がこの気持ちを伝えることもない。
生徒会長と風紀委員長なんて、結ばれるわけないじゃんね。

王道通り僕等は敵対していて、君の笑顔は僕には向けられないんだ。
欲しい言葉も、欲しい素顔も、君からは得られない。
辛辣なセリフばかりが僕には用意されている。
僕からは何も言えず黙るだけ。
その沈黙時に、ほんの少し「言い過ぎた…」って傷付いた顔する君が好き。

自己嫌悪なんて君には似合わないのに、僕に向けられた言葉の刃は、僕が言い返さないものだから君に返って行ってしまう。
自分が放った刃で傷付く君が痛々しくて、同時にキュンと胸を打つ。

可愛いなって、子供だなって、思う度想う気持ちは加速していく。
笑顔が見れないならせめて泣かせてみたいと、加虐心にも似た捻れた慕情が水底の中揺れている。

この恋は水の中燃ゆる炎に似て、非現実的で非生産的で、でもどうしようもなく焦がれるから、逆境という水の中だというのに恋心の火は燃えて燃え盛って、止どまることを知らない。
今度は僕が水となって、君という炎を閉じ込める檻になろうか。
くぐもった君の声を聞いてみたい。
捕らえたら囚われてよ。
ただ君を押さえ込んでキスをしてみたいだけ。

今日も水では消えやしない炎が僕の中燃えて、君という炎に恋す。
時よ止まれ、君よずっと生徒会長なれ、僕よずっと風紀委員長なれ、明日も幾年も変わらずずっと…二つの炎燃えよ。


2015.7.1

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