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▼ 君は僕に残される孤独を教えました

君がいない部屋で一人膝を抱えてる。
外は雨。
音は静かだ。
…ねえ、もし「寂しい」と言えば、君はあの頃の僕等に帰って来てくれますか?
そんなことあるわけないと、分かっていつつ湧いてくる想い。
未練でしかない。

微かな雨音を聞きながら思う。
孤独という砂漠で誰もが溺死しながらもがいているのだと。
そうだと思う。
そうだと思わねばあまりに自分が報われなさ過ぎる。
皮肉なことに、切ないという感情を植え付けたのも思い出させたのも、他の誰でもなく君でした。
過去は振り返るなと言うけれど、今が辛過ぎて先は怖過ぎて直視出来ない。
君といた過去の思い出だけが僕に優しい。
優しく、同時に残酷ではあるけれど。
逆に君といる未来を想像してみたら涙が出た。
涙の意味は知らない知りたくない知ってはいけない、とにかく苦いだけ。

遠ざかる雨足に君想う。
君よ夢は叶いましたか?
僕を捨ててでも夢見た世界は君に優しいですか?
二人きりで生きていくんだと思ってた。
そう信じて疑わなかった愚かしさ。
実際は珈琲と紅茶と同じ話。
珈琲より紅茶が好きだった君…おかげで僕は紅茶が飲めなくなった。
君を思い出すのが怖くて。
飲まなくても思い出すくせに…相変わらず小心者だと君は笑うだろうか。

ああ、それでもまだ一筋の光を信じてる。
馬鹿げてても、分かっているけど。
それでも君の帰りを僕はまだ…。

雨は上がった。
晴れてく空が僕の気持ちと反比例過ぎて毛布にくるまる。
夢の中では僕等は睦まじく手を繋いだりキスしたりしていて、余計涙が出た。

ふと、人の気配に目覚めればすぐ側に君がいた。
え?…と困惑する僕に君は「ただいま」と言って口付ける。
…これは幻?都合のいい夢?
何でもいいとにかく今は、

「おかえりなさい、愛してる」


2014.12.8

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