エゴイストの劣情



「はっ…ぅん」
「チッ、力抜けよ」
「ん…やれるなら、ア、とっくにやって、いますッ」

彼の躯を押し倒してシーツに縫い付けたのはいつだっただろうか
そのままほぼ強姦紛いにトレイの制服を無理やり脱がせて、その白い肌に喰らいつくと
最後の抵抗とばかりに鳩尾を狙って蹴ってくる足をナインがあっさりと掴んでそのまま内股に舌を這わせる
羞恥から顔を紅潮させたトレイが悔しそうに唇を噛んで泣きそうになっていた
いつもいつも、初めてでも無いくせにトレイは素直には組み敷かれない
以前その理由を聞いた時、トレイは不愉快そうに『力づくで組み敷かれると私の男としてのプライドが傷つくんです』とか何とか言っていた

ナインは、トレイが切なげに眉を寄せて、瞳に涙を今にも零れそうな程溜めて、必死に堪える姿がすごく好きだった
普段の落ち着きはらった表情がこんなにも乱れている
何より、自分の手によって彼が快楽に溺れているのだと思うと余計に興奮を煽られた

「ナイ…ン、も、無理」
「ハッ、自分から俺のキュウキュウ締め付けてきてるくせによぉ」
「っ…言わなくて、いいです!」

彼の中に奥まで埋めた自身をゆっくりと動かすと、とうとう彼の瞳から涙が溢れて頬に流れた
ふるふると躯を震わせて刺激に耐えようとする姿がいじらしくて
ああ愛しいな、可愛いななんて思って彼の涙を舌で舐めとる

「ふ…ぁ、」
「お前の中、ヒクヒクしてすげぇ気持ちいい」

「トレイ、」

耳元に唇を寄せて名前を呼ぶと、またトレイの中がきゅうと反応するのにナインはいやらしい笑みを浮かべる

「ナイン…!」
「怒んなよ、コラァ」

トレイがナインの肩を押し返そうと腕を伸ばしてくる
その伸ばされた腕を捕えてナインはトレイの指を口に含んだ
指一本一本を舌で丁寧に舐め先端にキスをする

自分の様に武器を握り戦わない指はマメなどもなく戦士とは思えない位綺麗な指をしている
弓を引くのに一番要と言える指をトレイが大事にしていることはナインもよく知っている
だからこそ、きっとトレイは今自分の指を愛撫されることに快感と同時に何処かで恐怖を覚えているはずなのだ

(この指、一本でも噛みちぎったらコイツは戦わなくて済むのかもしれない)

同じ候補生として死を覚悟して戦場にたっている筈の彼に対してこんな事を思うのはとても酷い侮辱だと思う
でもナインは少なからず今はそう思ったのだ
この強がりで甘え下手、本当は寂しがりな彼を傷つけない方法があるなら後で彼にどれだけ罵られようとやれる
彼を自分の傍において他の全てから守りたいと偶に本気で考えるのだ

「柄にもねぇ」

ナインは腰の律動を速めて内壁を擦ると、トレイの口からひっきりなしに嬌声が上がる
絶頂まで快感が高まって熱に浮かされた様な瞳をしたトレイの自身の先端を指で引っ掻いてやれば
あっさりと白濁が飛び、ナインも絶頂に達したことで更に自身を締め付けられる快感にトレイの中へ欲望を吐き出した
自身をトレイの中から抜くと、吐き出した白濁が一緒に外に溢れた
トレイ自身が吐き出したものとナインによって汚された白濁にまみれたトレイの姿はあまりにも卑猥で
トレイの蕾からとぷりと溢れた自身の白濁を掬って、ナインは再び蕾の中へ指を押しこんだ

「ひ!ん、ちょっ…!痛…!」
「トレイ、ちゃんと俺の精子受け取れよ」

トレイの顔にまた涙がぽろぽろと零れる
怯えた様子でトレイが逃れようと体を上へ上へと動かすもナインに腰を掴まれ引き摺り下ろされる

「ア、ア、ナイン、やめ」

膨らみのないトレイの腹部をナインは大事なものでもしまってあるかの様に優しく撫で、耳をあてた

(どうにか、縛りつけたいなんて)

「孕んじまえばいいのに」