「なぁ、やっぱ軟骨って痛い?」


珍しくアクセサリーが何も付いていない指が伸びてきて、耳殻に触れる。爪先がピアスを掠め、カシャリと鳴いた。


「開けるの?」
「考え中」


鉢屋の耳には左耳に一つだけシルバーのピアスが光ってる。ちょうど二年くらい前におれが開けてあげたやつ。


「また開けようか?」
「お前は意地が悪いから嫌だ」


意地悪もなにも、自分で待ったかけて追い込んでいったくせに。開けるよー、ちょっと待った。そんなやり取りを5回は繰り返した。始めの内は面白くて付き合ってあげてたけど、段々面倒くさくなってきて、最終的には問答無用で開けた。変なところで気が小さいというか何と言うか。


「雷蔵に頼んだら?」
「大雑把なの知ってるだろう」
「じゃあ、はっちゃん」
「不器用」
「兵助」
「危険すぎる。いろんな意味で」
「まぁ、確かに」


そういう意味では前回の人選は正解だと思う。自分で言うのもなんだけど器用だし、おれ。


「ほら、やっぱりおれにしときなよ」


手を伸ばして耳元に触れると、擦り寄るような仕草をみせる。うっわ、珍しい。なにこれ、可愛いっていうか恐い。明日は槍でも降るのかな。


「うん、病院行って開けてくる」


やっぱり全然可愛くなかった。
(意地でもおれが開ける)
(絶対開ける)



真綿に染みる消毒液のつめたさよ

project:糖衣錠はもういらない




人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -