びくっ、と肩が震えた。いや待て。だってなんでこんなところに居るんだ。おかしいだろだって。ここは私の部屋なのに、なんで深夜が居るんだ!鍵を掛けていた筈なんだが…あ、私が間違えたのか。そうだ、そうに違いない。

深夜に手を振って静かに扉を閉めた。廊下の端からちゃんと数えて扉を開ければやはりベッドの上に座っているのは深夜で。なんでだ!あれか、私の目が可笑しくなったのか。しかし、深夜の一言で私は絶望した。奈落の底に落ちていくような、わかるかあれだよ。

「会いに来たよ。お姫様」

にっこり微笑んでドアの前で絶望している私の腕を引いた。あー、何も考えたくないんだが。優ー、優ー。私は今すぐあなたに会いたいんだけど。あー、あー。

「ちょっとぉ、折角会いにきたんだから優ちゃんばっか呼ばないでよ。僕の名前呼んで」
「いやだね。なんでここにいるんですかー」
「だから会いに来ただけだよ」
「ほんとまじ帰ってくださいクソ」
「女の子がクソなんて……」

そのまま私は深夜とともにベッドにダイブ。ぎしりと軋んだスプリングの音が耳についたのでなんかムカついた。それに今日の彼は動きやすそうな服をしている。柊家の方がTシャツでしかも一瀬家次期当主の部下に会いに来てるなんてなあ。愛引きってやつか?あ、それじゃ私と深夜が付き合ってることになるじゃないかやだー。

私はどうにか深夜の魔の手から逃れて軍服を脱いでハンガーに掛けた。黒いシャツにスカート。これがまた動きやすいったらありゃしない。深夜は人のベッドで嬉しそうに横になっていたので私はその上にのしかかる様に飛び込んだ。深夜の胸板の上に私の胸を乗っけて軽く足を絡めてみた。顔はすごく近くてお互いの吐息が近く聞こえた。

「ねえ。胸当ててるのはわざとなの?」
「さあ、嫌なら退けるが」
「下着も脱いでくれたらもっと柔らかかったんじゃないかな」
「脱ぐのは嫌だな」
「残念」

のそりと起き上がって上着を羽織る。やっぱり寒かった。私はそのまま上着にくるまったまま目を閉じようとした。しようとしたから閉じてないのだけれど深夜が物欲しそうに見つめてくるものだからそこにあったブランケットを投げといた。うわー寒い寒い。暖炉が欲しいよ。暖炉が。

「こっち来てくんないの?」
「もう動きたくない」
「ニートみたいなこと言わないでよ」
「めんどい眠い優に会いたい」

最後のは聞き捨てならない、とむっと頬を膨らます深夜。なんとなく面白くて笑った。やっぱりベッドで寝たい。ベッドの上にいる深夜を退けてそのままベッドに潜り込む。温もりがいいなあ、なんて思いながら目を閉じた。深夜もベッドの中に潜り込んできた。人肌はやはりあったかい。眠い時とか寒い時とかは人が近くにいるといい。