Stachel
自分で読むことも出来るけれど、絵本をダーク・レオナルドに読んでもらうのってすごく好き。
背中をダーク・レオナルドの胸にくっつけて、膝に乗せてもらって読んでもらうのは特に好きなのだけれど、気持ち良くてうとうとしてしまう・・・
遠くでモヤがかかったみたいにダーク・レオナルドの優しい声がしてお話が聞こえてたのだけど・・・突然、電子音がして目が覚めた。
それはダーク・レオナルドに通信が入った音だった。
慌てて振り返るとダーク・レオナルドが不機嫌そうな顔をして回線を繋がないで切った。
・・・何故かわからないけどダーク・レオナルドは絶対に通信に出ない。
そして―――
「すまない、ちょっと出てくる。いい子にしてろよ」
っと頭を撫でる。
ほらね、やっぱり・・・だから俺はあの音が嫌い。
行ってほしくない・・・でも、俺は我慢するんだ。
そして『でも、行かないで』っと思いながらぎゅっとダーク・レオナルドを抱き締めたけど、想いはいつも届かない。
「出来るだけ早く戻ってくるからな。」
そう言ってダーク・レオナルドは優しく抱き締め返してくれたから俺は諦めて笑顔で
「いってらっしゃい!」っとダーク・レオナルドの唇にキスをした。
「何か欲しいものはあるか?ついでに買ってくる」
いつもの様に唇が離れるとダーク・レオナルドが聞いてきたけど、俺は首を横に振った。
「そうか・・・もし、欲しいものがあったら言うんだぞ、お前が喜ぶことは何でもしてやりたいんだ。」
それだけ言うとダーク・レオナルドはもう1度、俺を抱き締めてから部屋を出ていった。
『喜ぶことは何でもしてやりたい』ってダーク・レオナルドは言ってくれる・・・
そういえば、俺はダーク・レオナルドの喜ぶことをしてあげれてるのかな?
俺だってダーク・レオナルドを喜ばせたい。
・・・でも、何をしてあげれば喜んでくれるかよくわからなくて、
わからないことを教えてくれる端末に【恋人 喜ぶこと】っと入力してみた。
ネットワークは広大でプレゼントや行動、いろいろ情報が載っていた。
ネックレスや指輪、花束・・・そんなプレゼントをダーク・レオナルドが喜ぶかわからない。
それに・・・俺はここから出てはいけないし、出たくもない。
お金だって無い。
友達のコーディーに相談すればいろいろ教えてもらえたのかもしれないけれど、どうしても自分一人でダーク・レオナルドを喜ばせたかった。
「ダーク・レオナルドが好きなものって何だろう・・・」
そう考えながら目を閉じると頭の中でダーク・レオナルドの優しい声が響いた。
『・・・大好きだよ、レオナルド。 』
あの時は涙が溢れて止まらなかったけど、今は顔が熱くなるのを感じた。
一人っきりなのに恥ずかしくなって、熱くなった頬に両手を添えて隠した・・・
大好きなダーク・レオナルドは俺を大好きだと言ってくれた。
ダーク・レオナルドの好きなものって俺なの・・・かな?
俺をあげたら喜んでくれるのかな?
でも、俺をあげるって変だよね?
どんどん増えていく疑問に答えが欲しくて、端末に目をやると【言われて嬉しい言葉】っと言う文字が目に止まった。
きっと俺が言われて嬉しい言葉はダークレオナルドも嬉しいよね・・・?
どれくらい端末を操作していたかわからないけど、沢山の言葉を見つけられた。
その中でもやっぱり【大好き】って言葉が一番好きで、今度はちゃんと泣かないで伝えたい。
それから・・・【ずっと一緒に居てください。】も・・・
これの二つだけはダーク・レオナルドにちゃんと伝えたい。
そう俺が決心しているとドアが開いてダーク・レオナルドが帰ってきた。
「ただいま」
そう言って部屋に戻ってきたダーク・レオナルドを見たら胸が一杯になって、椅子から飛び降りて駆け寄って抱き付くと、少し身を屈めてダーク・レオナルドは優しく受け止めてくれた。
「どうした?何かあったのか?」
『おかえりなさい』を言い忘れて、黙って腕の中で収まる俺にダーク・レオナルドは少し心配そうな声で尋ねながら俺の頭を撫でてくれた。
頭を撫でられるのは大好きだからもっと撫でてて欲しかったけれど、俺は慌てて首を横に降って、ダーク・レオナルドを見上げて伝えたい言葉を口にした。
「俺、ダーク・レオナルドのこと大好き!」
今度は泣かずに伝えることができた。
それだけでも満足だったのに、「俺もだよ」と言ってダーク・レオナルドが優しく抱き締めてくれたから俺はぎゅっと抱き締め返してもう1つの言葉を伝えた。
「これから先の《未来》もずっと一緒に居てね。」
伝えられたことに満足していると抱き締める腕の力が抜けて、ダーク・レオナルドは両膝を着いて、俺をギュっと抱き締めた。
「“ レオナルド ”・・・」
そう呟くダーク・レオナルドの抱き締める力が強すぎて苦しかった。
「・・・ダ、ダーク・レオっ ナルド・・・苦、しい・・・」
「す、すまない・・・大丈夫か?!」
俺の声は無事にダーク・レオナルドの耳に届いて、ダーク・レオナルドは慌てて力を緩めて俺を解放すると俺の顔を黙って見詰めた。
・・・ダーク・レオナルドの顔は苦しそうで何かを必死に隠そうとしている気がした・・・
「俺は大丈夫・・・だけど、ダーク・レオナルドこそどうかしたの? 苦しそうな顔してるよ!どこか痛いの?!」
「なんでもない 」
心配でたまらない俺にダーク・レオナルドはそう言って微笑むと俺を自分の胸の中に今度は優しく抱き寄せて
「レオナルド」っと呟いた。
ダーク・レオナルドが無理に笑っている気がして、同じレオナルドと言ったはずなのにどこか違っている気がして、何故か涙が溢れた。
さっきのは“ レオナルド ”は俺のことじゃない気がする・・・
なんでだろう・・・胸が痛い・・・
ダーク・レオナルドのことが好きと思えば思うほど胸を刺す痛みは増して涙が溢れ続けた・・・
この痛みは何?どうして俺は泣いてるの??
ねぇ、ダーク・レオナルド・・・“ レオナルド ”って俺のことだよね・・・?
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