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本日を持って訓練兵を卒業する兵士達には、
3つの選択肢がある。



壁の強化に務め各街を護る「駐屯兵団」

犠牲を覚悟して
壁外の巨人領域に挑む「調査兵団」

王の元で民を統制し
秩序を守る「憲兵団」



無論、新兵から憲兵団に入団出来るのは、
成績上位10名だけだ。



「後日配属兵科を問う!
本日はこれにて第104期訓練兵団解散式を終える…
以上!」



教官の声に敬礼をしながら返事を返す、
まだ年若い兵士達の中に、
アルミン・アルレルトの姿もあった。


肩の上で綺麗に切り揃えられた
金色の髪を持つ、碧眼の少女。

アルミンは華奢で、
欠点のない人形のような顔立ちだが、
内に秘める意志は強く、
屈強な男達に引けを取らない。



解散式を終えた兵士達は
各々夕飯をとりに食堂へと向かっていく。
アルミンも、幼馴染みのエレンとミカサと共に、
今後のことを話しながら食堂へと足を運ぶ。



「お前、兵団の希望はどうするんだ?」



蜂蜜色の瞳を持つエレンが、
隣を歩くアルミンを見下ろして問う。
右にアルミン、左にミカサという
"両手に花"状態のエレンに、
羨望の眼差しを向ける兵士も少なくないが、
訓練兵団に所属していたこの3年の間に、
そんな視線にも慣れてしまった。


そんなの決まってるよ、とアルミンは笑う。




「僕は調査兵団に入る!」




「…おいアルミン、本気で言ってんのか?」




例えばこれがミカサだったら、
エレンも渋々ながら頷くだろう。
何せミカサは訓練兵団を首席で卒業した優等生、
歴代の中でも逸材だと言われている。

それに対してアルミンはその見た目通り、
常人より遥かに体力面で劣る。
か弱い彼女が立体機動で四方八方飛び回り、
バッタバッタと巨人を削いでいる姿なんて
想像がつかない。




「お前は座学はトップなんだから
技巧に進めって教官も言ってたじゃないか!」




「…死んでも足手まといにはならないよ!」




ムッと口を尖らせ反論するが、
なおもエレンは首を左右に振る。

駄目だ、調査兵団はやめとけ、と。




「長所を捨ててまで非効率な選択をするのは
勇敢って言わねぇぞ!」




幼い頃、エレンに外の世界の素晴らしさを
説いてくれたのは
他でもないアルミンだったが、
エレンは彼女が心配だった。

アルミンを死なせたくない。

この3年間、彼女が人一倍
努力してきたのは認めるが、
卒業模擬試戦闘試験を合格できたのも
奇跡に等しいのだ。



しかし、アルミンは
その大人しそうな外見とは裏腹に、
中々頑固なのである。


エレンがダメだと言ったところで
引き下がるような人間ではない。



「もう決めたんだ」



「アルミン…!!」



「ミカサはどうするの?」



苦虫を噛み潰したような顔をする
エレンを無視して、
アルミンは笑顔で黒髪の少女に尋ねる。


首席で合格したミカサは、
憲兵団に志願することが出来るが、
やはりアルミンが思っていた通りの
答えが返ってくる。




「私も調査兵団にする」




彼女はエレンが行く所なら
何処へでもついていくだろう。


幼い頃、自分の命を助けてくれた
エレンのためなら、
ミカサは何だってするつもりだ。




「…お前ら…」




これ以上何を言っても無駄だ。


深い溜め息と共に頭を抱える
エレンを横目で見て、
アルミンとミカサは目を合わせて微笑んだ。






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