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ハンジの話を思い返すと、
リヴァイは2年程恋人がいないと言っていた。
知り合って4年以上経つ、ということは
2人は2年程交際していたのだろう。




「…とても綺麗な方ですね」




さぞかし、手離したくなかっただろうに。
フラれたのは兵長の方だって聞いたから、
まだ未練があるのかな。
別れた後もこうして
店に顔を出しているのだから。
アルミンの予想に反して、
リヴァイは窓の外を見ながら素っ気なく呟く。




「そうか?化粧で誤魔化してんだろ」





「ちょっとー聞こえてますけど!?
はい、まずはサラダ。食べてね」




どん、と音を立ててアルミンの前に
サラダボウルが置かれる。
食糧難のため種類は限られているが、
それでも新鮮な野菜が
彩り豊かに盛り付けられている。




「綺麗ですね!絵画みたい」




素直に喜ぶアルミンを満足そうに眺め、
リヴァイの前には紅茶の入ったポットと
ティーカップを用意する。
彼は店に来ても殆ど食事をとらない。
紅茶を飲むか酒を飲むか、どちらかだ。




「食べないんでしょ?」




一応確認してみると、
リヴァイは鋭利な眼差しを
窓の外の景色からミシェルに移して頷く。




「あの大酒飲みはいねぇのか」




「いないよ。見ての通り、今日は暇だから」




「そりゃあ残念だ」




2人の会話を聞きながら、
アルミンは草食動物のように
モシャモシャと野菜を頬張る。
ドレッシングが美味しすぎて
頬っぺたが落っこちそうだ。
兵舎の食堂ではサラダなんて滅多に出ない。
テーブルに肘をつき、
リヴァイは食べるのに夢中になっている
アルミンを眺めながら口を開く。




「こいつの旦那は醸造家でな、
この店にある酒もそいつが作ったんだ」




「!えっ、」




食べている最中だというのに
口を開けようとしてしまい、
アルミンは慌てて口元を抑える。



旦那??




「半年前に結婚したの。幼馴染みの人と」




カウンターに戻って鍋をかき混ぜながら、
ミシェルは満面の笑みを浮かべて言った。
彼女の幸せそうな表情を見て、
リヴァイの目も細められたのに気付く。




「結婚してからは、
たまに店を手伝ってくれるんだけど、
残念ながら今日は居ないのよ」





「そ、うなんですか…」





あっという間に空になった皿を見て、
リヴァイは目を見開く。
よくもこう綺麗に食べたものだ。
口許をナプキンで拭いているアルミンと
葉っぱ一つ残っていない皿を交互に見て、
リヴァイは感心する。




「…随分とお行儀がいいな」




「はい?」




「お前を初めて見た時、
何処のお嬢様かと思ったが…
実際そうなんじゃねぇのか」




「??」




話が読めず目をぱちくりさせると、
リヴァイは無言で皿を指差した。
それを見て納得する。
確かに、食べ方が綺麗だと
褒められることは多々あった。
よく一緒に食事をとるエレンやミカサが汚いから、
余計に綺麗に見えたのだろう。




「祖父が躾に厳しくて」




外の世界の本をこっそり隠し持っていた祖父は
アルミンのことをとても可愛がってくれたが、
礼儀作法には人一倍厳しかった。
食事のマナー、言葉遣い、身嗜み。
女の子なんだからちゃんとしないと、が
口癖だった。

祖父がもし生きていて、
今の自分の姿を見たとしたら何て言うだろう?

両手にブレードを掲げ、
泥だらけで巨人に立ち向かっていく自分の姿を。




「ほう。その"僕"っていうのは怒られねぇのか」




「もう祖父は亡くなったので。
生きてたら、確実に怒られてましたね」




祖父の怒り顔を思い出し、くすりと笑ってみたが、
リヴァイはじっと此方を見ているだけで
何も言わなかった。




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