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向かうはアルミンの真正面にある空席。




「ここ、空いてるか?」




わざとらしくそう聞いてみると、
アルミンはぱっちりと目を丸くして頷いた。
その隣でエレンは金色の目を光らせる。
更に、横目で様子を窺ってくる
ミカサの視線が突き刺さった。




「話なら俺が聞くよ。
確かに、考えてみればおかしいよな?
巨人から遠ざかりたいがために
巨人殺しの技術を磨くって仕組みは」




「え…?聞こえてたの?」




「あぁ。少なくとも、
お前の隣にいるヤツよりは真面目にな」




嫌みったらしくそう言われ
明らかに敵意のある眼差しを向けられると、
流石に黙ってはいられなくなった。
エレンは強い眼差しをジャンに向けて口を開く。



「お前は確か…憲兵団に入って
楽したいって言ってたな?」




「ああ。俺は正直者なんでね。
心底怯えながらも勇敢気取ってやがる奴より
よっぽどさわやかだと思うがな」




調査兵団に入団して、
この世から巨人共を駆逐してやるという
強い意志を持つエレンにとって、
ジャンのその甘ったれた考えは
神経を逆撫でするだけだ。
憤りを覚え、わなわなと震えるエレンを宥めようと
それまで大人しくしていたミカサが
手に持っていたスプーンを置く。




「エレン、スープが冷める。早く食べて。
こんな奴の話を真面目に聞くことはない」




「こ…こんな奴!?」




不意打ちで浴びせられた辛辣な一言に
ジャンは怒るというよりは驚き、
隣のミカサを凝視する。
艶やかな黒髪に見慣れない顔立ち。
そして絶対零度の瞳。
呆気にとられているジャンを
ミカサは涼しい顔で見返すと、
更にジャンを追い詰める一言を放つ。




「さっきまでアルミンの後ろに座ってて
チラチラ見ているのを見た。気持ち悪い」




「な………!!」




「ほ、本当かミカサ!?このスケベ野郎!!」




「ち、違う!俺はただ話を…!!」




「うるせぇ!!どっか行け!!」




開拓地に移ってからというもの、
アルミンに対して不躾な視線を送る輩が増えたため
それを追い払うのがエレンとミカサの役目だった。

規律の厳しい訓練兵団なら
下品な輩も居なくなるだろうと安心していたが、
どうやら油断は禁物のようだ。

まるで蝿を払うかのように
シッシッと片手を振るエレンを見て、
ジャンの米神に青筋が立つが
それを宥めたのは
向かいに座っている当の本人だった。




「エレンもミカサも大袈裟だよ。
話を聞いてくれてただけだろう?」




「こいつがそんな学のあるように見えるか!?」




「少なくともエレンよりは真面目に聞いてたよ」




「うっ…!」




棘のある一言にエレンは返す言葉を失う。
エレンが自分の話を適当に聞き流していることを
アルミンは気付いていたのだった。
青褪めるエレンに心の中で舌を出し、
アルミンはジャンに向き直る。




「聞いてくれてありがとう。僕はアルミン。
君の名前も教えてくれるかな?」





さっきマルコに教えてもらったばかりだが、
彼女は礼儀正しく自己紹介をしてくれた。
はにかんだアルミンのその笑顔は
ジャンの心を鷲掴みにした。

おかしいな、
背中に羽根が生えているように見えたが。
そして心なしか彼女の周りが
キラキラ輝いて見えるような。



(て、天使…!!)




心の中で思いっきりそう叫んでから
ジャンはアルミンに自分の名を名乗る。
若干声が裏返っていたような気もするが、
まぁそれは気にしないでおこう。





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