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もし超大型巨人の爆発に巻き込まれたら、此処にいる全員が即死だ。一度その熱波で重傷を負ったことがあるハンジにはそれが分かる。


……やられた。


作戦立案をしたエルヴィンも、この状況は想定外だったはずだ。




「全員鎧の巨人から離れろ!!超大型巨人が!!ここに落ちてくるぞ!!」




この距離ではもう避けられないことは重々承知だが、出来るだけ被害を最小限に止めるため、ハンジは兵士達をなるべく中心から遠ざけようと声を上げる。


つい先程まで泣いていたサシャやコニーも、涙で濡れた頬をそのままに、必死の形相で建物の間を飛び回っている。



息つく間もない展開に、シャオは混乱していた。取りあえず今は身の安全を確保しないと。しかし焦りからか、シャオの体は思うように動いてくれない。

彼女は元々立体機動が苦手だった。見兼ねたリヴァイが一対一で指導してくれたおかげで、以前より大分マシになったが、今でも前線に立つ兵士としては心許ない。


一人遅れをとるシャオに気付いたのはスヴェンで、彼は一度動きを止め、シャオのことを脇に抱えて飛び始める。



「!」



「急ぐぞ!」




本当ならここでお姫様抱っこでもして王子様を気取りたかったが、生憎そんな暇はない。一秒でも早く離脱、今やるべきことはそれだ。

超大型巨人の爆発というのが何れ程のものかスヴェンは知らないが、あのハンジ分隊長がここまで恐れるのだから、巻き込まれたら即死レベルのヤバいヤツだというのは理解できる。



なるべく遠くへ……その一心で宙を駆けるスヴェンの腕の中で、もう間近に迫っていた樽の中から誰かが出てくるのを、シャオの瞳は捉えた。





「ライナァァァア!!」




逃げ回る兵士達の頭上。虫の息である鎧の巨人を見つけ、倒れている仲間の名を叫びながら樽から飛び出してきたのは、黒髪長身の少年だった。



彼が“人型”のまま立体起動でライナーに駆け寄るのを、シャオは目を瞬かせる。




「ベルトルト……!」




「あぁん?あれが超大型の本体か?」




「そうです!」




脇に抱えられているシャオは思いっきり顔を上げ、懸命にスヴェンと目を合わせる。巨人化しないのであれば、これ以上逃げる必要はないとスヴェンは足を止め、彼女の軽い身体を下ろす。


ありがとうございます、と律儀に礼を言われたが、シャオの目はベルトルトに向けられていた。




「ベルトルトがライナーの状態に気付いて攻撃を中断したんだ……!」




「ふー、一先ずは助かったね!」




我々は九死に一生を得た、と安堵の表情を浮かべたハンジが、作戦を立て直そうと兵を一ヶ所に集める。勿論、巨人化したエレンもそこに居る。




「何にせよ我々の作戦目標が目の前に飛び込んできたんだ。好都合と言っていいだろう」




敵は待ってはくれない。ゆっくり作戦を練り直す時間はないので、ハンジは手短に要点だけを纏める。




「作戦は以下の通り……スヴェン班はアルミン指揮の下、エレンを守れ!!その他の者は全員で目標2体を仕留める!!鎧に止めを刺せ!!超大型巨人は作戦通り!!力を使わせて消耗させろ!!」




「「「了解!!」」」




返事を返し、全員が雷槍を構えて再び立体機動に移ろうとした時だ。





「!!目標前方より接近!!ベルトルトです!!」




誰よりも動体視力が良いシャオが、一度顔を合わせたことがある少年の姿を見つけ、注意を呼びかける。


あの時は、まさか彼が超大型巨人の正体だなんて思いもしなかった。すらりと高い背丈、こちらを見下ろす優しげな瞳と表情。身長差が大分あって、目を合わせるのが大変だった覚えがシャオにはあった。




目標を捉え戦闘体勢に入るハンジ班の前に、躍り出たのはアルミンだった。





「待ってください!!」




「!?」




エレンを守れ、という自分の指示を聞かずに前に出てきたアルミンにハンジが厳しい目を向けると、それに臆することなくアルミンは続ける。





「これが最後の交渉のチャンスなんです!!」





「…………!」





それだけ言って、ハンジの了承も得ずにアルミンは一人でベルトルトに向かっていく。






「ベルトルト!!そこで止まれ!!」








そこにいるのは人類の仇だとしても。


僕達にとっては大切な同期で、友達だった。
それは変えようのない事実だ。





「ベルトルト!!話をしよう!!」






ーーー……殺さないで済むならば、
それが一番なんだ。





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