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エレンはライナー・ブラウン…鎧の巨人に敗北。エレンは項ごと鎧の巨人にかじり取られた。

そして、巨人化能力を持つユミルを抱えた、超大型巨人の正体…ベルトルト・フーバーは、盗んだ立体機動装置をつけ、鎧の巨人の背中に飛び移った。




そうして二人は去っていった。
エレンを連れて。






(どうして、そんなことができるの?)




壁の上を馬で駆けながら、シャオは連れ去られたエレンを想う。




(訓練兵時代を共に過ごした仲間は、かけがえのない存在なのに)




シャオにとっても同期の兵士は、苦楽を共にした一番の理解者と言える。家族と同等の存在だ。その中で最も長い時間を過ごしたペトラとオルオは悲しいことに死んでしまったが、肩を並べて戦い抜いた二人をとても誇りに思っている。


それなのに、その内の二人が、
壁を破った巨人だったなんて。






「………エルヴィン団長!」






それを知ったエレンの気持ちを思うと居たたまれなくて、気付いたらシャオは前を走るエルヴィンの背に向かって叫んでいた。






「私も前線に連れていってください!」






胸が引き裂かれそうだ。

エレンは、悲劇の幕開けであるシガンシナ陥落の被害者で、母親が巨人に食われる様を目の前で見たと言う。そして巨人をこの世から一匹残らず駆逐するという、強い意志を持つ少年。

それでも、まだ15歳の男の子なのだ。

多感な時期を3年間も共に過ごした同期には心を開いており、新兵勧誘式に連れていった時は本当に嬉しそうな顔をしていた。それは古城では見たことのない表情だった。



同期とは、強い絆で結ばれているのが窺えた。






「それは出来ない」





ぴしゃりと要望を拒否され、シャオの視界は歪む。無意識で手綱を握る手に力が入る。


エルヴィンは振り向きもしない。




「でも、私…確かにヒヨコみたいに弱いですけど…囮の一つにはなれます」



「………」



「壁外に逃げたなら、一人でも多く人数が必要な筈です」



「………」




「エレンが連れ去られたのにじっとはしていられません、お願いです、エルヴィン団長…!」




「…君の心臓は、」





無言を貫いていたエルヴィンが不意に口にした言葉を聞き、シャオの息は止まる。




「誰に捧げた?」






かつては他の兵士達と同じく公のために、人類復興のために捧げたこの心臓。けれど、今はーー…。





『お前の心臓は俺に捧げろ』





リヴァイのものだ。
たった一人の、あの人の為だけの心臓。



言葉をなくしてしまったシャオを諭すかのように、エルヴィンは前を向いたまま彼女に語りかける。



「私は人類の未来のために、時に非情な決断をする時もある…さっき君も言っていたね、囮の一つになれると。そうだ、時には仲間を囮に使うことさえ躊躇わない男だ。

しかし…リヴァイに『頼む』と言われてしまっては、私はその約束を守らなければならない。何故だと思う?」



聡い彼女なら解るだろう。

エルヴィン自身は覚悟さえ決めれば、人類の為に死んでくれとシャオに言うことが出来る。しかしリヴァイに彼女を頼まれた瞬間に、それは出来なくなる。




「リヴァイなくして人類の反撃は不可能だからだ。君が死ねば、私はリヴァイからの信用を失う。これは私の都合でもあるんだ」





はっきりとそう言われてしまえば、最早反論は出来ない。エレンへの思いとリヴァイへの想いに
葛藤し、シャオは唇を噛む。


そして、まだ何もはめられていない左手に目を落とした。

勝手に死ぬのは許さない。
彼はそう言っていた。

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