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外に出ると報せを受けた兵士達でごった返していた。喧騒の中、二人は兵士達に指示を送るエルヴィンの姿を発見した。
「エルヴィン!」
その声に気づいたエルヴィンは振り向くと、リヴァイとその隣に居るシャオに、交互に視線を送る。
「身体は大丈夫か?」
第一にシャオの身体を気遣ってくれたエルヴィンに、シャオは頭を下げる。
「ご迷惑をおかけして申し訳ありませんでした。もう大丈夫です!」
「そうか。ならよかった」
笑みを浮かべてからチラリとリヴァイに目を向けると、顰め面を返された。こいつは病み上がりだ、わかってるだろうな?と言いたげなのがすぐに解る。
エルヴィンもそこまで鬼ではない。丸々二日間寝込んでおり体が鈍っている女兵士を前線に配置しようなどとは考えなかった。それがリヴァイの女なら尚更だ。
「巨人が出現したのはウォール・ローゼ内地の南側だ。ひとまず南のエルミハ区に向かう。ハンジが来たら出発してくれ」
「あのクソメガネ…何やってんだ?」
調べたいことがあると言っていたが、一刻を争うこの状況でよく人を待たせることが出来るとリヴァイは不機嫌を露にする。
「どうやら壁を塞ぐのに重要な物質を見つけたらしい。あの三人と一緒にハンジの説明を聞いてくれ。私が即席で決めた班だ」
そう言ってエルヴィンが示した先には馬車があり、指名された3人が既に腰を下ろしていた。
その三人の姿を見て、シャオは目を見開く。
「エレン…!ミカサ、アルミン…」
よかった、無事だった。アニ拘束作戦の主力となったのもこの3人だったと聞く。エレンは昨日巨人化して女型と戦い倒れたと聞いていたが、いつもと変わりない表情をしている。
顔を綻ばせるシャオをちらりと見て、エルヴィンは言う。
「エルミハ区に着いたらハンジと3人にはすぐに南西へ向かってもらう。その間、リヴァイは司祭の見張りを頼む」
「了解だ」
…司祭の見張り?
話が見えないがシャオは首を傾げただけで黙っている。それもこれからハンジに説明を受けるだろう。
「シャオは私がエルミハ区に着くまで待機していてくれるか。準備が終わったらすぐに向かう」
「了解です!」
今回、リヴァイは戦いに参加出来ない。今の指示を聞き、シャオを見守る役を今回はエルヴィンが引き受けてくれたのが解り、リヴァイは彼に目を向ける。その視線を感じ、エルヴィンは小さく頷いて見せた。
辺りは日が暮れたばかりで薄暗い。そんな中、馬車に近付いてくる2つの人影に気付き、3人はパッとそちらに顔を向ける。
「あっ……!」
そして目に入った笑顔に感極まり、エレンは言葉を発することが出来ない。シャオが自分を見て笑ってくれている。
「エレン!よかった…本当に」
瞳を潤ませながら馬車に乗り込んだシャオは、奥に座っているミカサの向かい側に腰かける。
「ミカサも、アルミンも…!生きててよかった…!」
「シャオさんこそ!」
声を上げたのはアルミンだ。調査から壁の中に帰ってきた際、アルミンはジャンから話を聞いていた。ショックで声が出なくなっちまったらしい、と聞いた時は本当に心配した。古城を尋ねた時も姿を見せなかったし。
ミカサはシャオに敬礼をすると、私服で現れたリヴァイに気付き下を向く。女型と共闘した時に、自分を庇って負った怪我がまだ治っていないようだ。あの時大人しく指示に従っていれば、と自分を責める。
エレンは声を取り戻した彼女を見て、泣きそうになっていた。しかしミカサとアルミンの前で、そんな格好悪い姿は見せられなかったので、ぐっと堪えている。本当は泣きながら、ごめんなさい俺のせいで皆が、と謝りたいところなのに。
リヴァイがエレンの向かいに座った所で、「ごめんごめん遅くなった!」と駆け足でハンジもやって来る。
そしてハンジの隣に居る人物を見て、3人はポカンと口を開けた。
(兵長はこの人の見張りを…?)
そこに現れた人物は、ウォール教の司祭。
ウォール教とは、人類を守る三つの「壁」マリア、ローゼ、シーナを女神と呼び崇める宗教団体だ。
「あぁ、ニックとは友達なんだよ」
しれっと答えてハンジはニックの背を押す。馬車に乗り込んだ所を見ると、ニック司祭も同行するらしい。7人を乗せた馬車は走り出す。
訝しげな目を向けてくる向かいの三人に気付いたのか、ハンジは説明を始める。
「彼は壁の中に巨人がいることを知っていた。でもそれを今まで黙っていた」
昨日の戦いで破損した壁から発見されたという巨人。
「…教団が、壁の強化や地下道の建設を拒んだ理由っていうのは…その秘密を知っていたから…」
「そういうことだよシャオ。でも何故かは知らないが、自分が死んでもその他の秘密を言えないというのは本当らしい」
昨日ハンジが脅して吐かせようとしたが、ニックは頑なに口を閉ざしていた。話すぐらいなら死を選ぶと。
「他の教徒に聞いても良かったんだけど…彼は自ら同行することを選んだ。状況が変わったからね…現状を見てもなお、原則に従って口を閉ざし続けるのか…自分の目で見て…自分に問うらしい…」
説明を聞き、エレンはわなわなと体を震わせる。
金色の目はカッと見開かれ、その眼孔が、冷や汗をかき下を向いているニック司祭を貫く。
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