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愚かなことを口にした。
何故、アニが自分を殺さなかったのか、だって?
そんなこと、考えなくても分かる。
アニは、僕のことが好きだから
殺せなかっただけ。
『あぁ…心底そう思うよ。
あの時…何で…だろうね』
何処か上の空で呟いたアニの声が忘れられない。その後突然、狂ったように笑い出したアニの最後の表情が忘れられない。
ーー…あぁ、笑えてくるよ。堪らない。ほんっとに無様だね。好きな相手に利用されて、罠にはめられるなんてさ。
…アルミン、私があんたの…“良い人”でよかったね。でもね、アンタにいくら良い人って言われても、全然嬉しくないんだ。そんな軽い言葉で分類されるような存在にはなりたくなかった…いや、絶対に、なれないんだけどさ。
ただアンタの、“悪い人”になるのはゴメンだよ。
ーー…そして私は、戦士になり損ねた。
「…どうだろうね」
色々な事を思い出して、マルロの質問に答えるのに時間がかかってしまった。しかもそれは、答えにならなかった。
自分はこの想いを一生抱えて生きていくのだろう。
初恋の相手が自分に向けた最後の微笑みが、重い枷となって。
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