( 2/4)


真夜中、リヴァイ班は漸く礼拝堂に辿り着いた。鬱蒼と生い茂る木々の中、ポツンと孤独に佇んでいる三角屋根のその建物に、まずはリヴァイとハンジが近寄る。ゆっくりと礼拝堂の扉を開けると、こぢんまりとした祈りの間が現れたが、人の気配は全くしない。


石畳の通路を慎重に進み、無造作に敷かれた赤い絨毯を捲れば、簡単にそれは見つかった。




「隠し扉だ」



しゃがみ込んだままハンジは顔を上げ、外から様子を窺っている班員達を手招きする。憲兵団のマルロとヒッチには見張りを頼んだ。




「準備整いました!」




アルミンの声を聞き、リヴァイは立ち上がる。




「…そうか。それでお前ら…手を汚す覚悟の方はどうだ?」



敢えて言葉を濁してそう問えば、104期兵達の瞳は闇色に染まる。人間を殺す覚悟は出来たか?という問いに誰一人返事をすることは無かったが、その瞳で彼らは答えてくれた。




「…良さそうだな」




一番後ろ、扉の横にはシャオが立っている。シャオは信煙弾で前衛を援護する役目を担っており、危険は少ないがそれでも0ではない。一抹の不安が過るが、それでも心を鬼にしてリヴァイは隠し扉に手をかけた。


…本音を言うと、なにかしら適当な理由をつけて彼女だけを安全な場所へ送りたかった。しかしそうしてしまえば、手にいれた筈の彼女の心が遠く離れてしまう気がした。リヴァイは何よりもそれを恐れている。

シャオの命を失うことと同じくらいに。









ーーーーーーー
ーーーーー
ーーー…合図と共に、リヴァイはガス管をくくりつけた樽を蹴り落とす。そして地下へと続く階段をかけ下りた。ハンジと班員がそれに続く。

最後尾のサシャが樽目掛けて火矢を放てば、あっという間にその空間は煙で覆われた。

すると、あちらこちらで悲鳴が上がる。声の出所を辿れば、どうやら敵は奥にも複数居るらしい。


煙に乗じてリヴァイとミカサが先陣を切る。



「突破されるぞ!」



「打ち落とせ!」



突然姿を現した調査兵団を前に焦ったのか、憲兵達が銃を構える仕種がシャオの目にはスローモーションで映った。敵が散弾する前に信煙弾を撃つ。本来ならば奇行種発見の意を示す黒い煙弾が辺りを覆い隠し、そのおかげで敵は煙が邪魔で的を絞ることが出来なくなった。



(24…28…32)




立体機動で飛び回りながら、幾度の死線を潜り抜けてきたリヴァイの目は、煙幕の合間から正確に敵の姿を捉える。




「敵数35!手前の柱の天井辺りに固まってる!!」





戦場で誰よりも信頼出来るリヴァイの声が辺りに響き、ミカサやコニー、そしてジャンの、ブレードを握る手に力が込められる。




「作戦続行!!すべての敵を!!
ここで叩く!!」




…その指示を聞いて、104期兵三人の目は確かに光った。





ハンジの予想した通り、地下は広大で、突然変異でぽっかり穴が空いたようでもあった。少なくとも人間が造ったものには思えない。壁は煌々と神秘的な光を放っている。



(どこまで続いてるんだろう…)




104期兵達の援護はアルミンとサシャの役目で、シャオはリヴァイとハンジの援護を担当している。二人とも動きが早く、目を細めて注視していないとあっという間に見失ってしまう。しかもちょうどいいタイミングで煙弾を撃たなければ逆効果になってしまうので、これ迄にない程の緊張感に包まれていた。


その時、一人の敵兵がハンジに向けて2発発砲した。



「…!?」




的はずれなそれに違和感を覚え、思わずシャオは立ち上がる。




「シャオさん!身を隠してないと危険です!」




近くに居たアルミンが注意するが、シャオの耳には届いていないらしい。その目はじっとハンジと敵兵の動きを追っている。柱の間を猛スピードで飛び回る二つの影。不可解な動きをする敵兵の意図に気付いたのか、突然シャオは声を張り上げる。




「罠です!!」




シャオの叫びと同時に、敵兵のアンカーがハンジ目掛けて射出される。


避け切れなかったハンジはそれを右肩に食らってしまい、そのままワイヤーに引っ張られるようにして壁に叩き付けられた。




「ハンジさん!!」




あまりの衝撃で脳震盪を起こしたのか、ハンジは地面に転がったままピクリとも動かない。恐らくあの敵兵は全滅を予感し、せめて一人だけでも削ることを目的とした、満身創痍の攻撃だった。


殆ど無意識でハンジの方へと駆け出すシャオに、
銃口が向けられる。




「!!あの馬鹿!!」




リヴァイの目は目敏くそれを捉え、背後の柱へとアンカーを射出する。急な方向転換により、リヴァイの体には容赦ない重力がかかるが、リヴァイは顔色ひとつ変えずシャオを狙う敵兵を一蹴した。


ついでにシャオの首根っこを掴み、彼女を抱えて近くに居たアルミンに指示を出す。



「ハンジを任せた!!」



「りょ…了解!」



鬼気迫るリヴァイの表情に圧倒されつつも、アルミンはしっかりと返事を返す。




「残りで敵を追う!!」




体勢を立て直そうとしているのか、一瞬の隙に対人制圧部隊は奥へと引っ込んだ。リーダーであるケニーの姿も見当たらない。何処かで息を潜めているのか、それとも奴もエレン達の所に居るのか。

PREVNEXT


「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -